ダークナイト ライジング

ゴッサムシティを守るためにバットマンが立ち上がる。
ジョーカーの魔手から守られたゴッサムシティでは、混乱の中で死亡したデント検事を英雄に祭り上げ、彼の名に因んだデント法が施行されていた。バットマンは、ゴッサムシティの治安を維持するためにデントの罪を被って姿をくらましていた。
しかし再びゴッサムシティに悪党が乗り込んでくる。地獄から生まれたとうわさされるベインは、クリーンエネルギー目的の核装置を奪って核兵器に作り替え、それを武器にゴッサムシティを乗っ取り街ごと爆破しようと目論む。
ゴッサムシティを守るため、再びバットマンが動き始めた。……
いつになく男性客が多いレディスデイの映画館で観てきました。前作「ダークナイト」も男性受けがよかったんでしょうか。これは続編になってますね。(日本ではバットマンシリーズはいまひとつ人気がないと聞いているのですが。じつは私もそんなに観ていない……)
正直言って、前作の方が、縦方向の大きな移動をいかした逃亡場面や、モンティパイソンもびっくりのジャストミートな爆破連打や、スリリングなカーチェイスなど、アクションも派手で、全体にメリハリが効いていた。
今回は、ノーラン監督の「インセプション」の編集と音楽のつなぎの見事さを思い起こさせられた。うまいのにはちがいないのだが、危機感がいまひとつ盛り上がらず、登場人物のウェットな内面が画面ににじみ出すぎた印象を受けた。
ノーラン流シリアス路線のバットマンの世界では、キャットウーマンは良心的なSMクラブの生真面目な女王様みたいに見えるし、凶悪テロリスト・ベインも素では人柄がいい悪役プロレスラーのようにしか見えず、そういえば前作でヒース・レジャーが演じたジョーカーも異常発酵したけれどドブロクになりきれない甘酒みたいだった。このゴッサムシティには、じつはホンモノの悪人なんていないのじゃないかとすら思えてくるのが、個人的には乙な味わいに感じられる。
そこがリアルでいいんだよ、という意見があるのは承知している。でも、もうちょっといやらしいやつが出てきて欲しいんだよね。今回はとくにいやらしさが薄すぎる気がした。ちょっとヤな奴も出てくるんだけども弱すぎるし。
まあ、とことんいやらしい悪役はマンガチックになりすぎて、笑いを呼び込むし、ここではそういうやり方でドラマを描きたくないんだよ、ということだろうか。
しかし警察が弱すぎるのも気になったな。規制でしばられた警察の苦しさが語られ、劇中では「それ、おかしいんじゃないんですか」というつっこみも入っているものの、個人商店みたいなテロリストの前で、制服着込んだ一連隊があそこまで弱々しく見えてしまうというのは、笑うところではなさそうなだけに観ていて困ってしまう。
全体に現実味を糖衣にしたアメコミ映画というかんじになってて、どちらかというとマンガチックな意匠で現実をくるんだほうが大人向けファンタジーとしてはいいんじゃないだろうかと思ってしまった。
役者は皆うまい。とくにマイケル・ケインのじいやぶりにはほれぼれしました。

追記

いつになく男性客が多い、と上で書いたけど、今日1日だから、ファーストデイだったんですね。そのせいだったのかな。