雨穴『変な家』飛鳥新社

 

 

本屋の新刊コーナーに平積みになって、目立ってたので買って読みました。
さくさく読めて、おもしろい。ホラー風味ミステリー。


 主人公はオカルトライターで、知人から、この家を買おうかと考えてるんだけど、どう思う? と相談され、不動産屋からもらった間取り図を見せられる。間取り図、よく見ると不審な点があり、ライターは知り合いの設計士に見てもらうが、謎の空間と呼ぶしかない部屋があることが分かる。……
 ここから、謎の空間の解明と、その家のもとの持ち主(建てた人)を探る、そういう展開です。
 間取り図から、謎を見つける、というのがまずおもしろい。
 そして、ライターは変な家についての取材調査をするのですが、その聞き取りが会話形式で書かれているので読み易く、分かったことを整理してメモのように置いてくれるので流れがよく見える。
 おはなしは昔からある日本の怖いおはなし水脈につながっています、だから親しみやすい。

 私の買った文庫本には、「映画化 2024 3.15 全国東宝系ロードショー」と、映画宣伝用のカバーがかかっていて、それで目に飛び込んできました。「2023年 最も売れた小説!」とのキャッチも。
 文庫版にはすてきなしおりと、ボーナストラックのような劇中でライターに相談される設計士・栗原による文庫版あとがきもついていて、そこでは一般読者が物語を読み取る際の陥穽が指摘されていたり。文庫本を読むこと自体を読者といっしょになって楽しんでるような仕様になっていました。

 まずウェブ上で話題になった記事から本ができていて、続編もあるし、コミカライズもされている模様。
 世間ではとっくに話題になっていたのに、私だけが知らなかったようですね。

 メディアミックスによって、話題になることで、作品の存在を知らなかった人にまで届く、ということはあります。昔、角川が横溝正史の小説を映画化して、横溝正史の文庫本を出して、それで横溝正史の小説を読む楽しさを知った人は多かったです。また、川端康成の名前は小説を読んだことのない人にも知られていますが、「伊豆の踊子」がアイドル映画の定番としてよく作られていたためではないでしょうか。
 小説やマンガの映像化は、うまくすると原作を広く届けることにつながるのです。

「変な家」の映画化、期待しましょう!


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