第二十三回四国こんぴら歌舞伎大芝居

桜の花の下を通って芝居小屋まで行くのが例年のこんぴら歌舞伎なのですが、今年はすでに花は散っており、新緑の中を歩いていくことになりました。新芽の出だした枝垂桜に花が残っていたのが目にとまりました。花の色は薄紫がかったピンクだった。
観たのは第一部。「正札附根元草摺」「芦屋道満大内鑑(葛の葉)」「英執着獅子」。
最初に出てきた白と赤の花の色合いのすばらしさからはじまって、今回は舞台のセットの効果も印象的でした。「正札附根元草摺」ではうわさには聞いていた男役の足の親指の動きをたしかめ、「葛の葉」では字を書くところの見せ場のおもしろさ、なにげに子役がうまかったこと、それと、中村扇雀が落ち葉の舞う中宙乗りまで見せてくれたことで気分はゴージャス。
「英執着獅子」での坂田藤十郎は、大貫禄ですがすごくかわいい。着物の柄といい、扇子で作った獅子の頭に見立てた持ち物といい、華やかで可憐。獅子と化して出てきてからはパワー全開。午前の部ではお目見えの挨拶がないせいでしょうか、最後にはカーテンコールにまで応えてくれたのでした。
私は歌舞伎ファンとしてはへなちょこもいいところで、歌舞伎にくわしい人たちが話しているのを横で聞いていて知らないことがいっぱいあるなということを知る程度の者なんですが、ぼーっと観ているだけでもきれいだし、プログラムを買って話のあらすじだけでも目を通しておくと楽しめるのです。舞台のセットや役者さんの動きを観察しているだけでおもしろいですよ。おはなしも、映画で見たことのあるものや子供のころ本で読んだことがあるものなど、けっこう出てくるなというのがある。ミュージカルやオペラもいいけれど、日本には歌舞伎があるじゃないか、と思いますね。
坂田藤十郎は、私にとっては歌舞伎を観るきっかけになった役者として思い出深い方です。そのころは中村扇雀という名前だったと思いますが、テレビで踊っているところを見て、顔がぽっちゃりしているせいかその姿が博多人形みたいにかわいらしくてよかったのですね。多度津に公演に来たときに観に行って、本格的にファンになりました。
四国こんぴら歌舞伎大芝居