続 磯崎陽輔参議院議員(自民党)

昨日は、5月20日参院総務委員会でのご発言の中から垣間見えた、隠そうにも隠し切れない赤狩り根性に着目したが、今日はもうひとつの点を見てみたい。引用部は会議録から。
第169回国会 総務委員会 第15号 平成二十年五月二十日(火曜日)

礒崎陽輔
(前略)
 私は報道の自由というのはきちんと尊重されなければならないと考えております。しかし、それは放送法に定める政治的公平性というものをきちんとNHKが守っている限りの話であります。民放は正直言って少しひどい状況にあります。しかし、NHKは民放とは一線を画してもらわなければならないと私は思っております。政治家もできるだけ個別の放送に関し意見を言うべきではありません。また、経営委員会につきましても、この委員会の審議を通じ、個別の番組については意見を言わないというルールとされております。

 そうであれば、NHKの政治的公平性を真に維持できる責任と権限を有しているのは、今日そこにお座りの会長、副会長、そして放送総局長、そのお三方しか私はいないと思います。どうか皆さん方が、現場に任せるんじゃなくて、今私が指摘したような問題を真摯に受け止めていただきたいと思います。したがって、それ以上、どうしてくださいということは私はあえて申しませんが、しっかりと放送の公平性について御尽力を賜りたいと思います。
福地会長にお伺いをいたします。
政治的公平性の確保に、今言ったような事情から、もっともっと真剣に取り組んでいただきたいと思いますが、お考えはいかがでしょうか。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0102/169/16905200002015c.html

どうでしょう、これは。
先頃、バウネットNHKを訴えた裁判の最高裁判決があり、最高裁は、この件に関してはNHKの編集権行使は妥当だと判断しました。
[朝日報道問題]バウネット逆転敗訴 - 一人でお茶を
しかし、バウネットの番組の場合、制作現場の意向を踏みにじる形でNHK上層部が番組編集に介入、出来上がった番組は制作現場の意図とはちがった内容にされてしまったのです。
なぜそのような形で上が現場に介入したのか?
それには、政治家や右翼からの圧力があったことが影響しているという事情が、裁判やジャーナリストの取材からわかってきています。
圧力を受けたNHK上層部は番組の「公平性」を保つために編集権を行使したのでした。
NHK vs. 朝日新聞「番組改変」論争「政治介入」の決定的証拠 魚住昭
Daily JCJ : NHK裁判 最高裁判決に潜む後進性と問われるマスメディアの体質
磯崎議員の発言は5月20日参院総務委員会でのものですから、NHK裁判の最高裁判決が出るよりも前のものです。
バウネットの訴えにより、政治家がNHKに圧力かけたのかけないのと問題になった事件のことを磯崎議員はどう見ていたのか。
上の発言から想像するに、「当然のことをしたまで」「何がどう問題になるのかさっぱりわからない」―― こんなところなのではないでしょうか。
圧力をかけたと受け取られるのはまずいとは思っているようなのは、妙に言い訳がましい台詞がくどくどしく挟まるあたりから感じられますが、発言の主旨は「上が現場をきちっと管理しろ」になるんだな、としか私には読み取れないのですが。
この磯崎議員の質問に対する福地茂雄日本放送協会会長の答えもなんだかです。

参考人(福地茂雄君) 私は、会長就任以来、全役職員に対しまして、公正公平であることと、それから不偏不党であることについては口を酸っぱくして言っておりました。ただ、会長としての私が全番組をチェックしてはおりません。したがいまして、放送の部門につきましては放送総局長に権限を分掌しておりますけれども、しかし私は、それだけでは駄目なので、自分の指示していることが現場にどれだけ伝わっているかということは、かねがね私は現場主義というのを貫いておりますから、現場に出て検証しております。
この前も現場に聞きましたら、会長が現場に出てそういった委員の動きを検証したのは十年間なかったというふうなことを担当者が言っておりましたが、まず、このNHKスペシャルとか番組の解説のような非常に影響力のある番組につきましては、この前もNHKスペシャルについてどのぐらいシーズがあるんだと。このぐらいの厚さを持ってまいりました。その中からやっぱり公平に選んでいる。二番目にやりましたのは、企画をやっている部門に突然ですが出向きました。どういうふうに一つの企画についてかんかんがくがくの意見の交換をしているか。二十二名の職員が非常に熱心にいろんな立場から議論しておりました。三番目に私が出かけましたのは、あらあら作りました映像を編集する場所でございます。十数人の職員がこれも検討しております。

 そういったことを積み重ねていって、私は、私の言っておりますこの放送の公正公平、不偏不党が貫いていけるように努力しておるつもりでございます。

 以上でございます。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0102/169/16905200002015c.html

NHKは、ドキュメンタリーではいい番組も作っている。グアンタナモ憲法や日本の貧困問題など、NHKが取り上げることで広く知られるようになった課題は多い。
一方で、防衛問題などではひどく政府寄りの内容だなと感じさせる番組も作っている。
最後は観る側の判断ということになるにしても、NHKは市民が料金を払っているのだから、市民の立場や視線を忘れない番組を作ってもらわないと困る。
というわけで、NHKの動向は要注意、アホなことをやってたらがんがん文句を言わなければどうにもならなくなるだろう。