磯崎陽輔参議院議員(自民党)

NPJ通信「マスメディアをどう読むか」 丸山重威(2008.6.16)経由で知ったのですが、自民党の磯崎陽輔参議院議員が5月20日参院総務委員会でNHKに「偏向攻撃」 をした模様。
第169回国会 総務委員会 第15号 平成二十年五月二十日(火曜日)

礒崎陽輔君 自由民主党礒崎陽輔でございます。
 今日は、五月十一日に放送されたNHKスペシャル「セーフティーネット・クライシス 日本の社会保障が危ない」についてお伺いしたいと思います。
 特定の番組について質問をするのはできたら避けるべきであると私も考えてきました。当委員会で私も放送の政治的公平性について再三にわたって要請をしてまいりました。しかし、それにもかかわらずNHKは十分にこたえていただいていないと、そういう懸念を抱きましたので、今日あえて質問をさせていただくこととしたところでございます。
 昨年十二月二十日の当委員会におきましても、私は橋本前会長に対し政治的公平性について質問をさせていただきました。その中で、ワーキングプアに関する放送において、国民健康保険料が払えないため資格証明書の発行を受けている事案に関し、非課税世帯の保険料はそれほど高額ではなく、保険料が高かったときに何らかの理由で滞納をしたため保険料が払えなくなったのではないか、滞納をした背景についてもきちんと放送してほしいと要望したところであります。
 今回の「セーフティーネット・クライシス」は、よりセンセーショナルな放送でありまして、保険料の滞納のため二年以上保険証を取り上げられた方が、医療費を支払えないためいったん入院した病院で自ら医療の提供を拒否し、結局手遅れになってお亡くなりになったというものでした。お亡くなりになった方は本当にお気の毒であり、心からお悔やみを申し上げたいと思います。
 しかし、今回も保険料の滞納の背景については何も放送されませんでした。日本は国民皆保険の国であります。市町村には国民健康保険料の減免制度があり、災害に遭った場合、病気になった場合、生活に困窮した場合には一定の基準で保険料が減免されることになっています。さらに、本当に生活に困窮している場合には生活保護により医療扶助が受けられるようになっています。したがって、制度の上で医療が受けられないということには絶対にないように配慮されているわけであります。もちろんそれですべてが大丈夫だと私も言うわけではありません。制度の周知不足や現場での対応の悪さから残念な状況が全くないわけではありません。
 しかし、NHKが放送の中でお亡くなりになった方の保険料滞納の背景や市町村の減免制度及び生活保護の医療扶助の適用の状況について全然触れていないわけであります。したがって、本当にどこに問題があったのかよく分からないままであります。
 さらに、NHKは、保険料を滞納して保険証が取り上げられ、この二年間に全国で四百七十五人もの人が死亡したと放送したわけであります。そして、その原因はほとんどが医療費の十割負担を恐れて病院にかかることを控え手遅れになったと見られると断定をしております。ほとんど、何とか何とかと見られるという言い回しの、極めていいかげんな放送をしておるわけであります。保険証の問題と患者の死亡との因果関係を本当にNHKはきちんと検証した上で放送したのでしょうか。人の生死にかかわることを十分な検証なくして放送したとすれば、多くの国民の皆さんに大変な誤解を与えることになります。こうした放送の在り方は、放送法に定める政治的公平性の観点から大きな問題があると考えます。
 ところで、この番組の冒頭で国民健康保険に関して二つの病院の事例が紹介をされています。一つは堺市の耳原総合病院であります。もう一つは倉敷市の水島協同病院であります。率直に申し上げて、この二つの病院はいずれも民主医療機関連合会に加盟しておる病院であり、日本共産党と深い関係があると地元では認識されている病院であると伺っております。
 あらかじめきちんと申し上げておきますが、日本共産党及び当該病院について何ら偏見を持ち、他意を持つものではありません。この点は誤解のないようにお願いをしたいと思います。
 しかしながら、国民健康保険に関する放送の冒頭わずか十五分間に二つの事例、二つの病院の事例を放送しておるわけであります。そのいずれの病院も特定の政党と関係が深い病院であるとすれば、何か政治的公平性に疑念を抱かざるを得ないのであります。
 放送総局長にお伺いをいたします。冒頭紹介された二つの病院のいずれの病院も特定の政党と関係の深い病院であることを御存じであったでしょうか。また、そうであれば、取材対象が余りにも偏っているという印象を持たれませんでしょうか。その二点についてお答えください。
参考人(日向英実君) お答えします。
 最初の質問については、私自身は存じ上げておりませんでした。ただ、取材については、病院の取材というのは、様々な事情がございますので、数十件に及ぶ取材の中で、要するに取材に協力をしていただけるという病院を選んだというふうに思っております。
礒崎陽輔君 承知をして、そういう状況を知っておったと言っても問題ですし、知らないというのも、いずれにしても問題だろうとは思いますけれども。いろいろ取材したのかもしれませんけれども、どういうところを取材したのか。今言ったように、特定の政党と非常に関係ある病院の事例が、たった二つしかない病院の事例がたった十五分間の放送の間に二つの病院ともそういう病院であったということはこれは事実であります。
 私はNHKスペシャルのスタッフの中にこうした方面の情報に詳しい人がいるんではないかと思います。もちろん、そうしたスタッフがいること自体が悪いとは私も言いませんけれども、そうしたスタッフが放送の政治的公平性を、影響を与えているとすれば、これは大変なことであります。偏った取材、偏った内容を放送しているのではないかという疑念を抱かざるを得ません。
 今井副会長にお伺いいたします。副会長は先日の当委員会で私の質問に対し、政治的公平性といいますのはジャーナリズムの基本であると御答弁なさっております。しかし、私は、こんな偏った疑念のある取材をしていて本当にNHKの政治的公平性が保たれていると自信を持って言えるんでしょうか。私は少し内部の調査をしてみる必要もあると思いますが、副会長の御意見、お考えはいかがでしょうか。
参考人今井義典君) 先生の御指摘は、NHKの放送に公平性が保たれているかという御指摘かと思いますが、政治的な公平性は、前回の委員会でも申し上げましたように、私どもジャーナリストはテレビを始めとするメディアにかかわらず一番大事にしている原則であります。
 放送の内容につきましては、事実に即した情報を提供し、それに即したコメント、そうしたものを放送していくことによりまして、個人的な見解や特定の主義主張に偏っていると受け取られるような表現は慎んでおります。また、意見が対立している問題を取り扱う場合には、様々なビデオのリポート、インタビューに加えまして、異なる意見をお持ちの有識者を番組の中にお招きして議論をしていただく形を取ることが一つの方法になっております。
 今回の御指摘いただいておりますNHKスペシャルでは、現状での課題を、スタジオで三人の関係者、識者をお招きして、それぞれの立場から日本の社会保障について発言していただきまして、番組として十分に公平性を保っているというふうに承知しております。
礒崎陽輔君 今、具体的なことはあらかじめ言っていなかったのでそういう答弁になるのかもしれませんが、そういった現実があるわけです。私は、番組内容全体を通じても、まあ番組全体が私は悪かったとは申し上げませんけれど、今言ったように、国民健康保険については、減免制度であるとか生活保護であるとか、そういうものがなぜ適用できなかったこと、それをきちんとNHKが放送していないところが問題があるというふうに申し上げているわけです。
 決して私は与党寄りとか野党寄りとかそんなことを言っているんではありません。事実をきちんと客観的に報道していただくんであれば、私は何も個別の放送をあげつらって言うようなことはしません。あくまで事実であり客観的であること、それが必要だと思います。先ほどの病院の例は、まあこれは私も少し推測で物を言っておるところはありますけれど、推測で物を言っているんでありますが、そのような特定の政党と関係が深い病院が二つとも例示で挙げられる、やはりそこは何かNHKの裏にあるんじゃないかと、それは疑念ですよ、疑念を抱かざるを得ないということははっきりと申し上げておきたいと思います。
 私は報道の自由というのはきちんと尊重されなければならないと考えております。しかし、それは放送法に定める政治的公平性というものをきちんとNHKが守っている限りの話であります。民放は正直言って少しひどい状況にあります。しかし、NHKは民放とは一線を画してもらわなければならないと私は思っております。政治家もできるだけ個別の放送に関し意見を言うべきではありません。また、経営委員会につきましても、この委員会の審議を通じ、個別の番組については意見を言わないというルールとされております。
 そうであれば、NHKの政治的公平性を真に維持できる責任と権限を有しているのは、今日そこにお座りの会長、副会長、そして放送総局長、そのお三方しか私はいないと思います。どうか皆さん方が、現場に任せるんじゃなくて、今私が指摘したような問題を真摯に受け止めていただきたいと思います。したがって、それ以上、どうしてくださいということは私はあえて申しませんが、しっかりと放送の公平性について御尽力を賜りたいと思います。
 福地会長にお伺いをいたします。
 政治的公平性の確保に、今言ったような事情から、もっともっと真剣に取り組んでいただきたいと思いますが、お考えはいかがでしょうか。
参考人(福地茂雄君) 私は、会長就任以来、全役職員に対しまして、公正公平であることと、それから不偏不党であることについては口を酸っぱくして言っておりました。ただ、会長としての私が全番組をチェックしてはおりません。したがいまして、放送の部門につきましては放送総局長に権限を分掌しておりますけれども、しかし私は、それだけでは駄目なので、自分の指示していることが現場にどれだけ伝わっているかということは、かねがね私は現場主義というのを貫いておりますから、現場に出て検証しております。
 この前も現場に聞きましたら、会長が現場に出てそういった委員の動きを検証したのは十年間なかったというふうなことを担当者が言っておりましたが、まず、このNHKスペシャルとか番組の解説のような非常に影響力のある番組につきましては、この前もNHKスペシャルについてどのぐらいシーズがあるんだと。このぐらいの厚さを持ってまいりました。その中からやっぱり公平に選んでいる。二番目にやりましたのは、企画をやっている部門に突然ですが出向きました。どういうふうに一つの企画についてかんかんがくがくの意見の交換をしているか。二十二名の職員が非常に熱心にいろんな立場から議論しておりました。三番目に私が出かけましたのは、あらあら作りました映像を編集する場所でございます。十数人の職員がこれも検討しております。
 そういったことを積み重ねていって、私は、私の言っておりますこの放送の公正公平、不偏不党が貫いていけるように努力しておるつもりでございます。
 以上でございます。
礒崎陽輔君 会長からは極めて適切な御答弁をいただいたと思います。
 私も、今何度も言いましたように、NHKに介入しようという気はございません。今言った御三方に私も信頼してお任せをしたいと思いますが、今日私の質問をした内容は御参考になることを申し上げたつもりであります。十分指摘申し上げたことを踏まえて、今後とも皆様方、政治的公平性を保ったNHKを実現するために引き続き御尽力を賜りたいと思います。
 以上で終わります。ありがとうございました。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0102/169/16905200002015c.html

磯崎氏、共産党には偏見ないとことわってはいるものの。
NHKの番組に出てきたふたつの病院が民医連に加盟している」「民医連の病院は特定の政党と関係が深い」「NHK内部にその方面の情報にくわしい人がいるにちがいない」「NHKは内部調査をするべきだ」……
この流れ、どうしても"赤狩り"という言葉を思い出してしまうんですが。
いいのか、これ。
放送を語る会は抗議文を出した。
NHKスペシャル「セーフティネット・クライシス」に対する自民党礒崎陽輔議員の発言に抗議する。2008年6月9日 放送を語る会
磯崎陽輔議員は自身のサイトで次のように説明している。

 まず、皆さんには、是非トップページから国会中継ビデオを御覧いただきたいと思います。
 私は、NHKの取材先が偏っていると批判しただけであり、取材先の方に対して何ら批判をしているわけではありません。放送で二つの病院の事例が紹介されましたが、その病院がいずれも同じ系統の団体に加盟していることを指摘したのです。二つの放送事例のうち、その団体加盟の病院が一つだけであったならば、何ら批判する必要も、理由もなかったのです。
 また、御批判の中には、私に国民健康保険の現状について全く理解がないというものが多いのです。私は、国民健康保険の運用に疑問を持っています。日本は国民皆保険の国であり、保険料の減免制度や生活保護の医療扶助の制度が整備されているはずなのに、なぜ医療を受けられない人が存在するのでしょうか。その原因にNHKがもっと焦点を合わせて放送しなければならないのではないかと、NHKに指摘したのです。
 これらのことは、ビデオを見ていただければ明らかであると思います。
(引用元:いそざき陽輔のホームページ 活動記録 2008年5月23日(金))

http://www17.ocn.ne.jp/~isozaki/diary.html

磯崎議員は「同じ系統の団体」を問題視しているわけですが、おや、このノリ、前にもどこかで遭遇した、と思い出してみると、世耕弘成議員がNHKの経営委員の選び方はどうなってるんだと絡んだ、あの質問でした。
自民党にとっての「極めて政治的な発言」とは? - 一人でお茶を

これ、データベースで本当に公平に選ばれたんですか。総務省知っているわけないでしょう、この方を最初から。だれかから推薦を受けたとか、どこかの団体からこの人にしてくれと頼まれたとか、そういうことがあったんじゃないですか。お答えいただきたいと思います。
(引用元:世耕弘成  第169回国会 総務委員会 第7号 平成二十年三月三十一日(月曜日))

自民党にとっての「極めて政治的な発言」とは? - 一人でお茶を

ところで上の引用部の引用元になるリンク先がですね、いま見てみるとページ消えてリンク切れになってますね。これ、会議録だったんだけど、こういうのも期限切れになって消えちゃったりするのかね? 消えたんじゃなくて移動してるのかな?
それはともかく、どうも一部の自民党議員の間では、NHK内部に「どこかの団体」と関係のある人々が入り込んでて、その人たちがNHKを操っているのではというネトウヨ妄想がマジで語られているのではないか、いやあそういえばこのまえの参院選の時のチラシパンフレットはすごかったな、2ちゃんぽいといっても、あそこまでいくとニュース板よりオカルト板だよな、自民党、あの異様さを感知できなくなってるのかな、と不安になったことが思い出されるのね。
ひょっとして先の参院選での大敗も、「どこかの団体」の陰謀によるもの、マスメディアも「どこかの団体」に全部操作されてて、それで国民がだまされたからあんな結果が出たんだ、と、考えているんではないでしょうね?
自分たちのやっていることが、思い通りにいかないのは、目に見えない闇の勢力の陰謀のせいだ、そうにちがいない、って、精神状態がやばい人によく見られがちな妄想なのではないでしょうか。
で、あの。やっぱり、やばいの、自民党は?