その男、ヴァン・ダム

DVDで鑑賞。
落ち目のハリウッドスター "JCVD" が、故郷ブリュッセルの郵便局で事件に巻き込まれる。
このハリウッドスター "JCVD" は、演じるジャン=クロード・ヴァン・ダムのセルフ・パロディといっていい。
冒頭、アクションシーンが続く。ヴァン・ダム映画でよく見る場面。撮影終了後、ヴァン・ダムが話しかけても監督は白けた様子。続いて、離婚裁判での親権争い、法廷でもヴァン・ダムは不利な模様。
公私共に疲れた状態でベルギーの故郷ブリュッセルに帰ってきたヴァン・ダムは、郵便局で金を下ろす必要に迫られる。しかし立ち寄った郵便局でさらなる災いが彼の身に降りかかる。
事件が起こるまでの様子が、まず通りを歩くヴァン・ダムの姿を見つけた一般人の視点で描かれる。ヴァン・ダムに声をかけ写真を撮らせてもらうファン。それからヴァン・ダムは郵便局へと入っていくのだが、その後、郵便局内から発砲、駆けつけた警官は郵便局の窓を封鎖するヴァン・ダムの姿を目撃する。
郵便局で何が起こっているんだ、武装強盗か、ヴァン・ダムは中で何をしているのだろう。
しばらく郵便局を包囲した警官が事態がわからないままどたばたする様が描かれる。
次に、ヴァン・ダムの視点で、ブリュッセルに到着してから郵便局へ入っていくまでの模様が描かれる。ここで、何が起こっているのかがわかるわけだが、ヴァン・ダムにしてみれば弱り目に祟り目のような状況が続く。
前半のコメディ・タッチと、中盤からのヴァン・ダムの苦境、犯罪者の焦り、警察が突入する際の緊迫感と、飽きさせない流れ。全体にジャン=クロード・ヴァン・ダムの自虐コメディ的雰囲気が濃いのだけれど、フランス語圏の役者は、曖昧なようで鮮烈でもある内面にもやもやを抱えた状態を表現するのがうまいなと感じる。でもこの感想、私がフランス語にたぶらかされているせいでそう見えてるという部分もけっこう大きいのかもしれないな。
淀川長治がファン向けに映画スターを紹介した本で、このジャン=クロード・ヴァン・ダムを取り上げ、ハリウッドのアクション・スターの中では日常の男の身体の自然な美しさを最もよく感じさせると誉め、アクション・スターの枠に止まらず、もっと幅の広い活躍をする役者になって欲しいと語っていたのを思い出した。淀長さんがこの映画を観たら何と言っただろう。観てもらいたかったな、このヴァン・ダムを。
それと、この映画には『変態村』の村人になってた男優が出てるんじゃないかな。顔つき身体つきが似てる人が出てたもんで。白人は風体が似てると私には同じように見えてしまうから、かんちがいかもしれないか。『変態村』もベルギー・ルクセンブルグ・フランス合作なので、ひょっとしたらそうかも、と思ったよ。