さすらいの女神(ディーバ)たち

ニュー・バーレスクの一座が、フランスを巡業する。
かつてフランスでテレビプロデューサーをしていたジョアキム・ザンド(マチュー・アマルリック)は、現在アメリカでニュー・バーレスクの一座を抱えて各地を回っていた。そこへフランスでも巡業しないかという話が来る。一度は追われたパリへ、ニュー・バーレスクと共にまた返り咲くチャンスかもしれないとも思われたが、パリには過去のザンドの振る舞いを忘れていない業界人が何人もいた。四苦八苦するザンドだが、ダンサーたちは各地で順調に公演をこなしていく。
ニュー・バーレスクとはどんなものですか、と取材者に聞かれた女性ダンサーが、女性が女性のために演じるバーレスクよ、という。映画の中では、女性ダンサーが自分で演目を考え、客席には女性もおり、エロチックだがユーモアにあふれた明るいショーを楽しませてくれる。主人公の元テレビプロデューサーは小悪党といっていいキャラなのだが、強面にはなりきれないせいか可愛げもあり、なにか憎めない。劇中に出てくるバーレスクのショーが、いろいろうまくいかず疲れた主人公をもなぐさめるような絵に映っている。
女性ダンサーたちは若くもないし、体型もルノワールの絵に出てくるようなかんじで、やや古風な女性らしさを魅力的に見せるショーになっている。こういう見世物は、撮る人によってはカリカチュアされたおもしろさを強調されたりしがちだけれども、この映画では、そういう女性を素直に美しい眺めとして映している、観ていてそう感じた。
フランス男によくみられる女好き精神の伝統にのっかった、くたびれた男が女に癒される話になっているともいえるけれども、ザンドを演じたマチュー・アマルリックがチャーミングなので私はこれでOKです。女性ダンサーたちは強そうで、状況が変われば自分から他の場所に移動していくだろう。現在いっしょに旅している人たちの間の友情が描かれていたと思いました。