ゴーストライター

DVDで鑑賞。
元英国首相のゴーストライターを務めることになった男が元首相にまつわる極秘事項に触れてしまう。
元英国首相のアダム・ラングの自伝執筆を依頼されたゴーストライターユアン・マクレガー)は、ラングが滞在するアメリ東海岸の孤島へと出向く。前任者はこの島で溺死体となって発見されており、自殺なのか事故なのか判然としない。
守秘義務を負わされた上で仕事に取り掛かったゴーストライターは、前任者が遺したラングに関する資料を見つける。前稿と照らし合わせると矛盾する点が見つかり、事実をたしかめようと調べ始めるのだが、その過程でラングには重大な秘密があることに気づく。国際政治に関わるスキャンダルのしっぽをつかんでしまったゴーストライターは、身の危険を感じ始める。……
冒頭、ゆっくりとフェリーが現れ、着港したフェリーから車が次々と降りていく。しかし、一台の車は動かない。運転手がいない。その後、海岸に打ち上げられた溺死体が映る。不穏な死から物語は始まる。
ゴーストライターが高額のギャラで元首相に雇われ、ばたばたした雰囲気で孤島まで赴く。このあたり、出版社での人々の会話や電話でのやりとり、移動していく過程の様子で、ゴーストライターが陥っていく状況を手際よく見せてくれる。主役の人物の表情が際立つ画面の背景が、ちょっと昔の映画を思い出させる書割風に映っており、ヒッチコックタッチとでも呼びたい映像で、快調におはなしが進んでいく。
ゴーストライターになるとは、表向きはいないことになっている人になることである。前任者の男も、自分のしている仕事を公にはできないという契約に縛られたまま、何かを知ってしまったのだ。謎の死を遂げた前任者と同じ部屋に寝泊まりすることになるゴーストライターは、やがて同じ行動を反復することになるのだが、このあたりは同じポランスキー監督作品「テナント」(原作・ローラン・トポル『幻の下宿人』)を思い出させる。妙なことになってしまった男が、傍から見ているとちょっとこっけいな様子で困った事態にずるずる巻き込まれていくサスペンス。
話の展開にイラク戦争が織り込まれているのがリアリティを高めているのもうまい。
すっきりとした絵、簡潔で要を得た会話、役者のツボを押さえた演技、淀まず濁らず流れていくストーリー。これはサスペンスの名品ではないだろうか。
主演のユアン・マクレガーが、最後までひっぱっていってくれます。