イングロリアス・バスターズ

DVDで鑑賞。
ナチスをおもちゃにした悪ノリ悪ふざけ映画。
日本公開当時、雑誌での映画評ではほめているものが目立ち、映画ファンにもおもしろかったよと感想を書いている人が多いので気になってはいたのだが、気張って芝居するブラッド・ピットが苦手なのと、タランティーノに思い入れがないのと、上映時間が長いので敬遠していた作品。
感想としては、自分の直感は正しかった。気張るブラッド・ピットは避けるのが無難。それに加えてこの映画を観てタランティーノも苦手物件と化した。前から薄々と苦手意識を持っていたのだが、これではっきり苦手なんだと自覚できました。
タランティーノ、「レザボア・ドッグス」を観て、この監督さんはゴダールが好きなんだろうな、と思った。新人監督の小品という趣きがあったのがよかったが、「イングロリアス・バスターズ」になると、この監督はゴダールの欠点だけを抽出してデフォルメして受け継いでしまったのかと疑う。私はゴダール作品のいい観客ではないだろうが、ゴダールの映画を観ている間は、映画を観ていることに対して苦痛を感じたことはない。しかし、「イングロリアス」は観ることそれ自体がつらかった。
フランス映画での不発の笑いは許容できるが、アメリカ映画だと許せない。フランス映画の持つ魅力がアメリカ映画からは感じられないせいなのか。
観ながらこれは山咲トオルのホラーマンガ「戦慄!!タコ少女」に似たかんじの映画として楽しむべき作品なのかもしれないと思い当たったりしたのだが、マンガならともかく、こんな長尺の映画ではそれをするのもしんどい。そもそも映画全体が平板で間延びした印象しか残さない。ブラピは最悪。
唯一の救いは、ランダ大佐を演じたクリストフ・ヴァルツの快演。彼が出てきた場面だけは笑いも呼び込めていた。
悪ふざけ映画なので、怒られそうな感想を言いたくもなったが、あえて言うのはやめよう。その代り、バカにされそうな感想は言ってしまうと、映画を観てナチスとドイツ軍人をこれほど愛しく思ったことはない。いっさいのためらいなく愛しく思ったし、そんな自分にもなんのやましさも感じなかった。
タランティーノは、脚本や製作だけならいいのかもしれない。