歌劇トスカ ウィーンの森バーデン市劇場

アルファあなぶきホールで鑑賞。
1800年、ナポレオンが猛威を奮った時代のローマ。ヴォルテール主義者の画家カヴァラドッシは、政治犯となった友人の逃亡の手助けをしようとするが、以前から目を光らせていた警視総監スカルピアは、この事件をきっかけにカヴァラドッシの恋人トスカを手に入れようと企む。美しく純心だが嫉妬深いトスカ。彼女はスカルピアに猜疑心をかきたてられ、その結果恋人と自身を窮地に追い込んでしまうのだが。……
カヴァラドッシとスカルピアが歌うのを聴いていると、白人がもっともエロティックなパフォーマンスを見せてくれるのはオペラなのではないかと思えてくる。すばらしかった。うっとりしました。信心深い堂守のつぶやきや聖書の一節や聖歌が、痴情のもつれ状態に陥っていく主役三人に対してつっこみ効果を帯びて響き、しかもサディスティックな欲望が昂進したスカルピアの高揚した歌声が聖歌隊と重なり合うなど、キリスト教のおかげでドラマに深みが増しておりました。あの状況下でトスカの歌う「歌に生き、恋に生き」があれほどうつくしく響くのは、神の光と影があってこそ。ラストのひとこと、あれはこわい。
舞台セットがうまくできていることに感心。だまし絵にたとえるのはよくないのかもしれませんが、必要最低限の装置を上手に利用して異なる場面を作り出していました。
ウィーンの森バーデン市劇場の来日公演は今年で17年目となり、今回の公演が300回目ということで、演出監督のあいさつもありました。すばらしかったです、また高松に来てくれるとうれしいです。