『世界』2012年11月号では、平田オリザと想田和弘が橋下現象を中心に芸術家と政治の関わりについて対談している。大阪大学の教員をしているため週の半分は大阪で過ごしている平田オリザが実感する、大阪での橋下の人気ぶりなど、聞きどころは多いが、隔靴掻痒なかんじは否めない。まちがっても橋下に熱狂したりしない人同士が、自分と同じ種類の人に向けて語っているからだろう。つまりネトウヨと呼ばれるような人種は自分たちの仲間にはいないし仲間に入れたりもしない、そういう人達向けの雑誌だということか>『世界』http://www.iwanami.co.jp/sekai/
もちろん、そういう雑誌もないとおかしいし、『世界』を読んで自分はひとりではないと勇気づけられる人たちも多いだろう。
ただ、ふと『SAPIO』が特集したネトウヨ亡国論を思い出してしまう。
http://www.zassi.net/detail.cgi?gouno=31939
在特会らを取材して『ネットと愛国』を書いた安田浩一のレポートを載せていたのは立派だが、ずっとネトウヨソース供給源の役割を果たしてきた『SAPIO』がいまさら何言ってんの、と、最初はこの企画自体に鼻白んだ。でも、じっさい読んでみると、ネトウヨのエートスを掬い上げるのは『世界』より上手なんだよね。蛇の道は蛇、ということか。批判という点ではビミョーだが、ネトウヨ像を浮かび上がらせるという点では『SAPIO』さすが。
週刊金曜日2012年10月5日号では、金曜アンテナでルポライター・古川琢也が、在特会の池袋反中デモの様子を見た後、それに関してツイッターでつぶやいたところ在特会の会員からリプライがあったので、それにこたえて豊島区民センターの会議室まで在特会の取材に赴いたものの、桜井会長に「胸糞悪いならなぜ取材に来た?!」と逆上され、取材拒否された顛末が読める。くわしくは週刊金曜日を読んでみてください。
http://www.kinyobi.co.jp/
二年前に週刊金曜日で桜井会長にインタビューしたときは、「相手がどんな立場だろうが取材は受ける」と語ったそうだが、もうそんなことは忘れているらしい。
週刊金曜日に桜井のインタビューが載ったときは、週刊金曜日が桜井を取り上げること自体を非難する声もあった。しかし、私は、そのときのインタビュー記事から、掲載された桜井の写真も含めて、なんともいえないさびしげな雰囲気を感じ取り、それは在特会なるネトウヨ市民団体の実像をこちらに伝えてくれる報道になっていたと思った。貴重なルポだった。