DVDで鑑賞。
鳥が人間を襲い始める。
メラニー(ティッピ・ヘドレン)は社交界の問題児だった。ある日、ペットショップで出会った弁護士ミッチ(ロッド・テイラー)に興味を持ち、彼が週末にはボデガ・ベイにある母と妹が住む実家に帰ることを知りいたずら心を起こす。ミッチの妹へのプレゼントにラブバードを内緒で実家に届け、ボートに隠れて様子を見守るメラニー。そこへ一羽のカモメが飛んできた。……
「サイコ」と並び、この「鳥」も何度観てもいい。白黒を活かした「サイコ」とは異なり、「鳥」はまず色彩が美しく、画面の中のティッピ・ヘドレンをぼんやり眺めているだけでも幸福な気分になれる。音楽が使われておらず、静寂の中で描き出される人間模様の背景に鳥の羽音と鳴き声が響く。鳥の気配が濃くなると鳥がたてる音が増し、危機感が迫る。鳥に襲われる人の視点が続いた後、混乱に陥った街が地上の音が聞こえない高みから捉えられ、そこにすっと飛ぶ鳥の姿が大写しで入り鳴き声が混じり始めるのは文字通り鳥瞰、場面の主体が鳥に乗っ取られた瞬間だ。ラブバードのつがいを鳥籠に入れて物語の世界に運び込んだメラニーは、いまは鳥によって自分が地上で電話ボックスに閉じ込められている。
スズメやカラスの群れを見かけることは普段よくあるし、時には路上に鳥の死骸が落ちていることもある。また、冒頭部でペット屋で小鳥が籠から出てしまい必死でつかまえようとする場面があるけれども、日常の中で起きることが想像しやすい鳥にまつわる出来事から、物語の世界で起こっていることが想像しやすいせいもあって、恐怖が実感される。
全体の流れの中での間の取り方も含めてヒッチコックの語りのうまさを堪能できる動物パニック映画。