目次
エピローグ 電柱鳥類学の将来
- 電柱と電線の基礎知識
- 鳥、電線に止まる
- 感電しない鳥たち
- 鳥、電柱に巣を作る
- 電力会社、鳥と戦う
電柱鳥類学。まだ正式な学問名称ではない。しかし、都市に暮らす鳥たちを追ってきた著者にとっては、電柱がこの世に現れて150年、そしてこの先50年もすれば電線の地中化によって電柱は姿を消すかもしれない、つまり、長い歴史の流れの中で、鳥と電柱が関わり合うという稀な時代を我々は生きているのだ、電柱・電線に止まった鳥たちの姿をぜひ記録しておかなければ! という秘めたる情熱がひたひたと伝わってくる快著、です。
身近にありながらよく知らないでいた電柱や電線について教えてくれるのが、まずうれしい。
また、「スズメは電線にとまってるけど感電しないの?」という、だれでも一度は思ったことのある謎についても説明がされていて、あ、そうなんだ、になる。
そして、電柱に巣を作る、それも意外なところにスズメが巣を作っていたりする、ぼーっとしているだけでは気がつかない鳥の動きがわかり、人と近いところで暮らしている鳥に興味がどんどん湧いてくる。鳥からすれば、人の動きも人が作る事物も、環境の変化、ある意味で自然の変化になるのかもしれない。
口絵の写真やコラムも含めて、読みやすくておもしろく、噛めば噛むほど味がでる、そんなかんじです。岩波科学ライブラリーはいいね!
この著者は電柱が好きだそうですが、私も好きです、そして、電柱といえば思い出すのは夢野久作の猟奇歌
春の夜の電柱に
身を寄せて思ふ
人を殺した人のまごゝろ
これも、「電柱」というのがいいんだけど、やがてこのかんじ通じなくなるかもしれないんだね。ま、鳥は、感傷的になることなく軽やかに変化に適応していきそうですね。