『世界』2021年6月号 no.945 阿部潔「ソーシャルメディア時代のメガ・イベント 反転と幻滅のゆくえ」

 

 

 現代社会に定着したメガイベントは、マスメディアの宣伝力によって一般大衆の関心を集め、観客としての一体感をもたらしてくれるものとして大衆も楽しみを共有してきた。
 SNSの普及により、大衆はより能動的にメガイベントに参加し、約束されている筈の未来の感動をネットで先物買いする株取引として享受するような楽しみ方も覚えた。
 東京2020オリンピック・パラリンピックは、そこへ真のイベントともいえるコロナ禍がふりかかり、オリパラは延期を余儀なくされ、開催方法も "みんなが参加" とは程遠い形となっていった。大衆は失望し、SNSでは怒りが共有されるようになってゆく。そして、森元首相の失言があかるみに出ると速攻でハッシュタグによるバッシング炎上が起きる。

 SNSでオリパラへの熱狂や幻滅を共有し発信する形で関わった人たちは、狂騒の共犯者でもあった。そのことを自覚しつつ、令和オリパラ炎上を振り返り、反省してみるときではないでしょうか。

 くわしくは『世界』6月号を読んでみてくださいね。

 

 『世界』6月号の時点では、あのオリパラ前夜のネット炎上は起きていないので、取り上げられているのは森元首相失言炎上だけですが、下のような本も出ています。

 

 

オリパラが終わった後は、大勢の人たちはもうあのネット炎上のことなどすっかり忘れているようです。それはある意味健康なことなのかもしれませんが、現に炎上被害者が出ているのですから、その被害者は救わないといけません。


ちょっとSF脳を駆動させますが、オリパラ前夜の殺気立った雰囲気の中、2chのコピペから生成されたブログ記事がそれまでそんなことに何の関心もなかった人たちにまでオリパラネタとして広く拡散されていった様は、あの時期のデルタ株の感染大拡大とパラレルだった印象があります。
 オリパラの熱狂は去り、ネオコロナの感染拡大も収まってきています。いったん落ち着いたこの時期に、被害者の手当てに関心を向けていただければと願います。