『世界』2023年11月号 木村友祐「虐殺から百年後の朝鮮人犠牲者追悼式典」

 

今年、両国・横綱町公園で開催された「関東大震災 百周年 朝鮮人追悼式典」のルポ。著者は今回初めて追悼式典に参加したとのこと。

 開催された公園では、追悼碑撤去を求める団体「日本女性の会 そよ風」の集会もあり、多数の警官や警備員が出動して騒然とした雰囲気だったという。

 くわしくは『世界』11月号で読んでみてください。

 

 この式典については、小池百合子東京都知事になってから追悼文送付をしていないことが気になる。思想がどうとかいう以前に、小池百合子の政治家としての勝負勘はたしかなものがあるので、送付しなくていい、と、小池が判断しているということは、政治面での流れがそうなっているということを示しているのかな、と。防衛や外国人労働者を増やそうという動きと連動しているのではないか。

 

 上の記事に関連する本として、辻野弥生『福田村事件』五月書房新社。

 

関東大震災時の朝鮮人虐殺の波にのまれた香川県からの行商人の一行が襲われ殺された事件を調べたもの。

 朝鮮人差別に加えて、部落民差別、行商人への定住民の偏見などが合わさって起きた事件。

 当時の日本の世相・風俗が具体的に分かる。

 なかなか帰ってこないので、地震に巻き込まれたのかと気をもんでいた家族のもとに、生き残った人が帰ってきて何があったのかを話し、家に集まってそれを聞いていた近所の人たちもいっしょに泣き出したとか、関東の住民に囲まれ殺されそうになった時、「死ぬ前にお経をあげさせてくれ」と頼み、お経を唱えている内に警官が駆けつけて命拾いをしたとか、帰郷してから丸亀の検事に呼び出され事情聴取された人が「今日話したことを書き残しておくように」と言われたので半紙に書いたが、その後呼び出しがなかったので手記はそのまま仏壇の下の戸袋に数十年しまわれたままになっていたとか、後年事件を調べに行くと、当時の死者を供養したお寺に犠牲者の記録が残っていたとか。

 くわしくは本を読んでくださいね。

 

 上の本に特別寄稿している森達也は、初めての劇映画として「福田村事件」を撮りました。そのことについてのインタビューが『世界』2023年9月号に載っています。

 

 

 また、これは四国新聞の書評欄で紹介されていたのですが、佐藤冬樹『関東大震災と民衆犯罪』筑摩書房

 

検察が114件を立件し、約640人を起訴して、大半が有罪になった資料に着目し、批判の余地のない記録から当時の虐殺を検討したもの、だそうです。