本屋へ行く

お正月は家にこもって、ごろごろしながら本でも読んで過ごそうということで、本を買いに行く。
今年は雑誌の廃刊が相次いだ。その一方で書店の棚にはいろんな種類の新書が並んでいる。新書のほうが、自分の興味のあるテーマだけを選べるので雑誌よりいい、と考えている人も多いのだろう。
でも私は、ひとつかふたつある読みたい記事が目当てで買った雑誌の、残りの期待していなかった部分をぼーっとながめるのが好きで、すると自分では興味を持とうにも持てないままだったまったく知らなかったことが見つかったり、自分ではぜったいに買うことはないだろう通信販売の広告をじーっと読んでみたりするのも興深く、これまで思いもつかなかったことをいろいろ気づかされたりおもしろがれたりするところが好きだ。
それと、雑誌には、ところどころにイラストがあしらわれている。あれを眺めるのが楽しい。単行本の挿し絵とはひと味ちがった、雑誌のざらついた紙面の上に雑誌ならではの記事といっしょに載っているからこそ醸し出されるグルーヴというのがある。ページの隅っこに出ている小さな広告にも、それだからこそのグルーヴがあるのだ。
とはいえ、総合誌と呼ばれている雑誌は一度消滅して再生したほうがいいのではないかとも思う。ウヨ雑誌やサヨ雑誌はカルト雑誌だが、それだけに愛読者の向こうに敵=他者もいることをちゃんとわかっている。総合誌というのは、ムラ社会やってるくせにその自覚がない、それどころか、自分たちだけはムラなんていうものにはとらわれていないんだよね、と、ムラの仲間同士でうなずきあっているようなところがなんとも鼻持ちならない、というか、もう白けてつきあえない気分にさせられるようになってしまっている。
80年代から続いた「あたりまえ」がもはや過去のものになろうとしているのだろう。もう過去のものになった、と言うべきか。
そんなことを考えたりしながらしばらく本屋をうろうろし、ぽつりぽつりと読んで楽しめそうな森茉莉武田百合子のエッセイ集を買った。この文庫本にもすてきな挿し絵が入っている。寝転がってぼんやり眺めているだけで、楽しいお正月が過ごせそうだ。

貧乏サヴァラン (ちくま文庫)

貧乏サヴァラン (ちくま文庫)

ことばの食卓 (ちくま文庫)

ことばの食卓 (ちくま文庫)