『世界』2023年12月号 田中東子「性加害とファン文化の不幸な関係 ジャニーズ問題とわたしたち」

 

本稿では、日本社会が抱えている課題のひとつに、性暴力への黙認という問題が潜んでいること、ポピュラー文化が今日では「数の力」という経済的な価値によって乗っ取られていること、ファンの誠意と忠誠心そのものが、この問題をうやむやにし、隠蔽するための駆動力として搾取されていることを主張したい。

BBCのドキュメンタリーが世に出てからの、日本のマスコミやジャニーズ事務所の対応について、そしてそれに対する一般大衆の反応について精緻に分析、とくに、とかくミソジニーな視線にさらされがちなジャニーズファンに対しても偏見にとらわれない見方で評してくれています。

(一部のファンのSNSでの被害者への誹謗中傷がはてなブックマークでは大きく取り上げられますが、そういうことをしているのは極一部で、Xでもニュースを追いつつ淡々とつぶやくファンが大半です)

『世界』12月号で読んでみてくださいね。

 

 週刊誌で取り上げられても猟奇ネタとして消費されるだけだった昔とは違って、今回は性暴力問題の一例として受け止められているのは進歩と見ていいでしょう。しかし、ジャニーズの場合芸能実話でもありますから、ハリウッドバビロンの昔から続く読まれ方、「まあひどい」「わあきもちわるい」といった、他責的エロネタ消費も伴っています。そうされるために芸能界はある、というのも、永遠に変わらないでしょう(それは芸能がもてはやされるのと表裏一体ですから)。

 なので、ジャニーズ事務所に被害届をした方は、もう週刊誌などの取材は受けない方がいいと思います。マスコミではなく、事務所が被害者にちゃんと対応してくれるかどうかが問題なのです。

 ジャニーズ事務所ですが、再発防止特別チームを設置して、被害について調査報告を出したことは評価されていいはず。それがなければ何もはじまらなかったでしょう。その後の対応に問題があるなら直していけばいいし、被害者が余計な不安を持たずに相談できるようにするのが最優先です。