司法警察から行政警察へ

週刊金曜日2008年10月24日号に平田剛士「認証社会第8回 「ただいま」の前にまず認証?」という記事が載っている。
警察庁国土交通省と協議して作った「安全・安心まちづくり推進要綱」(2000年)に基づき、マンションの防犯設備の充実が図られ、その例として札幌に建てられた銀行の金庫室に使われているのと同じ指紋認証のシステムを採用したマンションが紹介されている。
国交省が2001年に策定した「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」に照らして建物を審査し、合格した物件を認証する制度も設けられ、「防犯モデルマンション」などといったお墨付きを与え、それをセールスポイントにするよう指導しているそうだが、この審査には、警察や国交省と関係の深い「第三者機関」が有料で当たるという。
詳しくは週刊金曜日2008年10月24日号を読んでもらいたいが、防犯指導を通して警察がマンション建設に強く関わり、さらにまちづくりにも介入しようとしていることをこの記事は伝えている。

警察の視線はさらに、マンション防犯のもっと遠方に定められている。監視社会論に詳しい清水雅彦・札幌学院大学教授(憲法学)は、「安全・安心まちづくり推進要綱」制定以降の動きを、日本の警察が従来の司法警察(起きた犯罪の検挙)から行政警察(起きるかもしれない犯罪の予防)に軸足を移しつつあることの表れとみる。
「戦前は、国民の健康・労働・建築・風俗などにまで介入する行政警察的な治安活動が行なわれていました。戦後はそれが大幅に縮小されたのですが、1980年代以降、再び拡大し始めているんです」(清水さん)
行政警察の対象はずばり全住民である。かくして全国の自治体で関連条例が次々に制定される事態となった。
(引用元:平田剛士「認証社会第8回 「ただいま」の前にまず認証?」 週刊金曜日2008年20月24日号)

監視社会化に警鐘を鳴らす記事は、ネット上では「全国民が常時監視されるなんて事態はあり得ない」と被害妄想扱いされることも多い。たしかに、国民全員を四六時中監視するというのは、やろうとしても無理だろう。
そうなると、仮に監視社会化が進んだとしても、監視される対象は、安心・安全をかき乱す恐れのある危険人物に絞られるだろうが、しかし誰が危険人物なのかを判断するのは警察なのだ。警察に不審だと評価されたら「不審者」になるのである。

上の動画では、画面中に大きく映る一人の頭の禿げたおじさんが指差して「押さえろ!」とどなったら、指差された人が押さえられているのがわかります。動画を見た限りでは、この場面で誰が不審かそうでないかはあの禿げたおじさんが決めています。(関連:麻生でてこい!!リアリティツアー救援会ブログ
権力が市民の監視を強化しようとしているのなら、市民はそのことにもっと敏感にならないと、また戦前に起こったような悲劇が繰り返されるのではないか。
防犯といわれると、安心・安全を望む小市民はなかなか反対しづらいのが正直なところだが、どうみてもやり過ぎだという事例を見たら、「やり過ぎだ」「おかしい」と言わなければならないし、体感治安の悪化は現実の治安状況を必ずしも反映しておらず、警察は市民を安心させたいのならまずそのことを広報しないといけないだろう。しかし警察は市民の体感治安の悪化に乗じて勢力を拡大しようとしているようにしか見えない。
防犯利権というのがあるのかもしれないね。欝だ。