悪目立ちする在特会の背後に広がるもの

岩波書店世界』2009年7月号に、西中誠一郎「数多くのカルデロンさん一家」というルポルタージュが載っています。カルデロンさん一家を標的にデモを行なった在特会らのことも取り上げられていましたが、それよりも日本政府がどういう対応をしたかがくわしく報告されていました。興味のある方は『世界』2009年7月号をお読みください。
メモとして、テロ対策や体感治安の悪化を理由に、どういうことが行なわれてきたかという部分を一部引用しておきます。

「不法入国」と「不法残留者」をあわせた「不法滞在者」の人数は、09年2月現在、約13万人。03年から日本政府は「不法滞在者を5年間で半減する」という政策を「治安テロ対策」の名目で打ち出した。
自主出頭を促す「出国命令制度」や、インターネットを使って密告を奨励する「メール通報制度」、「外国人と思われる従業員」の個人情報を就職・離職時にハローワークへ届け出ることを罰則規定つきで義務づけた「雇用対策法」の改定、空港での「日本版US-VISIT」の実施など、次々に出入国・在留管理の強化を進めてきた。「不法滞在外国人は犯罪の温床」という、警察統計にすら基づかないデマ情報が、「体感治安の悪化」という注釈付きで政府・マスコミから垂れ流されるなか、警察と入管が連携し、職務質問や摘発を徹底的に強化した。
職場や自宅付近の買い物途中、モスクや病院、外国人支援のNGO事務所周辺や、駅周辺(東京入管の最寄り駅である品川駅周辺でも!)など、外国人が集まるありとあらゆる場所が、「不法滞在外国人狩り」の舞台となった。
このような過剰な摘発に加え、景気の悪化による帰国の増加も重なり、04年には約22万人だった「不法残留者」は、09年2月には約11万人に減り、法務省は「5年間で不法残留者を半減させ、国民が安心して暮らせる社会の実現に貢献した」との報道発表を行なった。
(引用元:西中誠一郎「数多くのカルデロンさん一家」岩波書店『世界』2009年7月号)

そして、これからの外国人への対応を読むと、この監視体制はそのうち日本人に対してもなんらかのかたちで実施されるのではと不安になってきます。

法務省入国管理局の非正規滞在者に対する対応にも問題がある。今年2月11日の報道発表「不法滞在者五年半減計画の実施結果について」の中で、入国管理局の取り組みとして「不法滞在者」を日本に「来させない」「入れさせない」「いさせない」という三本柱を掲げ、「依然として約一万人存在する不法滞在者の一層の削減を行なう」と公言している。非正規滞在者であっても、人間としての尊厳そのものを否定するような国の政策や、差別を助長する言論は容認できない。今国会でも、出入国管理と在留管理の個人情報を一元的にデータ管理し、外国人の監視体制を強化し、非正規滞在者や難民申請者を行政サービスから徹底的に排除する入管法住民基本台帳法の改定案が審議され、議論が尽くされないまま、改定入管法は五月中にも衆議院を通過する予定だ。
(引用元:西中誠一郎「数多くのカルデロンさん一家」岩波書店『世界』2009年7月号)

改定入管法については次のサイトにQ&Aが出てた:排除ではなく「共生」のための制度を !
正直言って、私も「不法滞在者」になるような人には日本に来てもらいたくない、増えてもらいたくないです。でも、このルポルタージュを読む限りでは、現在の政府の対応は十分きびしいものになるのではないでしょうか。また、カルデロンさん一家のような例となると、それほど数が多いわけではないので、個別の事情を考慮して対応がなされてもいいのではないかと思ったりしました。
法務省のサイトを見てみると、今月は「不法就労外国人対策キャンペーン月間」だったんですね。
「不法就労外国人対策キャンペーン月間」の実施について 平成21年6月1日 法務省
気がつかなかったな。治安テロ対策として不法滞在外国人狩りが行なわれていた、なんてのも、テレビのニュースや新聞ではあまり取り上げられていなかったんじゃないのかな。体感治安の悪化は、よくテレビでも言われてるけどね。