ホステル2

DVDで鑑賞。
アメリカ人女子留学生が旅先で拉致監禁拷問される。
冒頭、美しい火が燃え上がっているのが映る。暖炉だろうか。毛むくじゃらの男の手がバックの中から財布や手帳を取り出し、火の中に投げ入れていく。若い女の顔写真が入ったパスポートも見える。燃える火に照らされた酒瓶やグラスが端的にうつくしい絵を見せてくれる。シリーズ一作目の、気色悪い絵の中に響くのんきな口笛がキモオカシくむずがゆかった導入とはちょっとちがった雰囲気。
休暇でプラハに行く予定だった3人の米人女子学生が、ローマで知り合った女性に教えられた天然スパがあるというスロヴァキアのブラティスラヴァに急遽行き先を変更する。
3人はブラティスラヴァのホステルに着き、村の収穫祭で地元の男性と踊ったりして楽しんでいたのだが、やがて、一人、また一人と拉致されていく。ここは『1』と同じ。『2』がちがっているのは、彼女たちを買う拷問マニアの金持ちたちの方も、同時進行で描いていること。
『1』は、旅行に来たアメリカ青年が主体になっている場面が多く、彼から見るとブラティスヴァという町がどんなところなのかよくわからない、そこから来る不安感がこちらにも伝わってきて、ホステルや拷問工場の裏がはっきりと見えないことが怖さにつながっていた。
『2』にはそういう怖さは期待できない。おはなしはネオリベ怪談なのだが、映画観た感想としては、ネオリベ・ズンドコホラーとでもいうしかない。
ただし、おはなしはよく出来ている。伏線がちゃんとあり、観ていくとおおなるほどになるんだけど、小器用にうまくまとまってる感じもするんですね。イーライ・ロスがうまいのはたしかで、この先どうなるか楽しみ。
前作より、ズンドコ濃度上昇、おバカ感増大で、舞台がヨーロッパのせいもあって、1970年代のイタリア産ホラーの味わいを思い出させる楽しさはある。でも、なんか即物的で大味、残酷シーンもギャグのネタにしかする気がないような殺伐感もある。その殺伐を自嘲気味に楽しむところがいまどきなのかな。
70年代のアルジェントやフルチの作品には、店のオヤジがスープの取り方にこだわっているラーメン屋みたいな(なんだこのたとえは)味わいがあった。イーライ・ロスにはそういうものが感じられない。特殊メイクが進歩したせいなのか。手探りで血みどろをこしらえていた70年代とはちがって、今は既に定番レシピが出尽くしてるからなのか。
イーライ・ロス、ホラーではないジャンルの映画を観てみたいな。期待が持てる監督だね。