エスケープ・フロム・L.A.

DVDで鑑賞。
地震で島となり、アメリカの流刑地となったロサンゼルスに、テロ集団が巣食う。
1998年、アメリカでは反政府勢力が拡大、政府は国家警察を組織する。2000年、大地震が起きロサンゼルスは島になってしまう。大統領は狂信的な男で、ソドムとゴモラ(ロサンゼルス)に天罰が下ったと演説。憲法が改正され、その狂信者が終身大統領となり、アメリカは警察隊が監視する国となる。島と化したロサンゼルスは流刑地になった。
2013年、大統領の娘が機密装置を盗み出し、大統領専用機でロサンゼルスへ逃げ込む。狂信的な潔癖思想で国を管理支配する父親への反逆だった。この娘の手からテロ集団のリーダーに機密装置が渡ってしまう。
国家警察は機密装置を取り戻すため、元特殊部隊員のアウトロー、スネーク・プリスキン(カート・ラッセル)を利用することにした。死亡率100%のウイルスを打たれ、8時間8分26秒以内に機密装置を奪還しないと解毒剤が投与されない条件下で、スネークは単身ロサンゼルスへ侵入する。
徹頭徹尾B級魂で染め上げられたSFアクション。カート・ラッセル演じるスネーク・プリスキンは、西部劇のヒーローをキッチュに仕立てたかんじで、最初から最後までシリアス顔のまま、ズンドコアクションをクールに乗り切っていく。
地震の後、テロリスト集団が支配する無法地帯と化したロサンゼルスは、絵的には大友克洋AKIRA』なんかと近い。廃墟と化した有名スポットがむずがゆい景色となり、ビバリーヒルズの整形しすぎで人間やめかかっている連中の人狩り皮剥ぎ組織など、風刺ということばで片づけるにはやんちゃすぎる光景が続く。
レトロなヒーローのたたずまいのままスネークが見せる活躍も、見方によってはトンデモだ。闘技場で命をかけてのバスケット・ボール、窮地からノーテンキなサーファーといっしょに脱出するツナミ・サーフィン、またシリアスな表情のままズンドコな危機に次々遭遇するなど、強いんだかそうでもないのか判断に苦しむ活躍が続く。
カート・ラッセル、狙ってやってるんだろうな。おかしいし、でも嫌味はなくて、やっぱりかっこいいし、好きだよ、スネーク。
狂信的大統領に支配されるアメリカは、超管理国家で、酒やタバコや女などは禁止されており、もちろん言論や信仰の自由もない。流刑地となったロサンゼルスには、思想犯や、イスラム教徒も流されている。超管理状態のアメリカより、ここロサンゼルスのほうが自由でいいわという流刑者さえいる始末。
ロサンゼルスを仕切るテロリスト集団のリーダーは、外見のイメージとしてチェ・ゲバラが採用されている。私にはそう見えた。北米支配を目論むテロリストは公に向けてのメッセージの中で、南米の勢力を北米に対抗するものとして自分たちの味方ととらえている発言をするし。
しかし、このテロリストも狂信的な独裁者で、自分の父親と大差ない。そのことに気がついた大統領の娘は、スネークに機密装置を渡そうとする。
豪快な男子ノリでぐいぐい進んでいくおはなしだが、終わってみると伏線がうまく張られていたことに気づく。オチはいかにもレトロなSFアクションらしいもので、SFアクションといえばB級だった時代を思い出させるグルーヴがいいかんじ、私はそう思う者ですが、経験からいうとこういうのって人によって好き嫌い分かれるんだよなあ。「どこがおもしろいの?」と真顔で善い人にいわれたらちょっと困っちゃうかなあ、みたいなさ。
さて。この主人公のスネークだが、古き良き二十世紀の香り漂うレトロなアウトローということになっている。そのせいか、警官に「タバコある?」とすぐ聞いちゃうんだよね。もちろん、舞台となっているアメリカは禁煙国家になっているから警官はタバコなんか吸わないし、持ってないんだよ。
それで、警官から離れて、仕事が片づいた後、スネークがタバコを見つけて一服する場面があるのね。これがいい。喫煙者なら、ああ、おいしそう、と思うんじゃないかな。自分もあーいう一服がしたいなあって。でも、既にそういう感覚、世間的にはレトロになってるのかもしれませんね。