菜の花

外を歩いていて咲いているのが目についた。そして、今年はまだ花が群生している光景を見ていないことに気がついた。川原や土手、野原など、菜の花がたくさん密生している場にまだ行き合わせていないのか、通っても記憶していないだけなのか。今年の春は花がさびしい印象があるのは、自分の気分のせいなのか。
栗本薫『滅びの風』(ハヤカワ文庫)を読み返したいのだが、どこに片づけたのかわからない。探せば出てくるだろう。近未来を舞台にした滅びの物語。よくあるパターンだが、SFというにはオーソドックスすぎる味わいで「メメントモリ」を近しく感じさせてくれる作品集だった。明るさと安らかさを奥底から呼び起こす暗い物語が並んでいた。栗本薫は時流に関係なくよい小説を書いていたよなあとあらためて思う。
イラスト:blue daisy