マイ・ドッグ・スキップ

DVDで鑑賞。
孤独な少年が犬を飼うことで成長していく姿を描く。
1942年、ミシシッピー州ヤズー。人口一万人ほどの小さな町に、9歳になるウィリー少年が暮らしていた。他の子にくらべて身体が小さく、フットボールで遊ぶよりは本を読んでいるほうが好きなウィリーは一人っ子。近所の三人組には甘えっ子とからかわれ、いじめられていた。
そんなウィリーに、母親が誕生日のプレゼントとして子犬を飼わせてくれることになる。ウィリーは大喜び、スキップと名づけ、いつもいっしょに行動するようになる。
かしこいテリア犬・スキップは、ウィリーにとってははじめてできた友だちとなった。そしてスキップを通して、他の子供たちとも近づき、親しくつきあえるようになっていく。
ウィリーはスキップと共に、日々いろいろな体験をし成長していくのだった。
原作は児童文学。この映画も児童文学の世界を堅実に再現している。いじめっこみたいな三人組も、陰湿ではなく根はいいかんじに見えるし、密造酒作りのヤクザっぽい男たちが悪役として出てくるが、子供に危害を加えることはない。1940年代の静かなアメリカの田舎町の光景が、ほのぼのとした物語に真実味を与える。
子供たちは楽しそうだが、時代は戦時中である。田舎町に住む人も時代の流れの中にあり、町から出征した若者が戦死したり、町の人気者だったスポーツ青年が戦争をきっかけに人が変わってしまったりする挿話によって当時の様子が描かれている。
ウィリーも戦争のことが気になり、スペインでの戦争で片足を失った父親にいろいろたずねたりする。父親はまだ9歳の息子にはくわしいことは語らない。しかし、ある日父親と森の中を歩いていたとき、ウィリーは鹿狩りの現場に行き合わせ、撃たれた鹿が倒れて死んでいくのを目撃する。傷つき倒れ、でもウィリーが駆け寄ったときはまだ息があった鹿。ウィリーは獣医を呼ぼうというが、大人たちは苦笑し、父親はウィリーを連れてその場を離れる。ウィリーは、戦争というものの残酷さを、そこで直観する。
ショッキングなシーンはなく、笑いもほのぼのとしたもので、スキップの愛らしさが画面をリード、親子連れも安心して楽しめるおはなし、しかし大人もこれを観ると、過ぎ去った子供時代の思い出がほほえましくよみがえり、子供だった自分を愛しいと感じられるのではないだろうか。そして、こういう平穏を支えるために大人たちが払った労力にも思いが至り、しみじみしてしまったりするかも。
スキップがひとりで町を歩き回るシーンは、犬好きにはたまらない眺めだ。でも、犬が苦手な人にはお薦めできない作品なのかもしれないな。犬がずっと映っている映画なんですよ、これ。
物語は成長したウィリーが奨学金を得て、田舎町から大学へと旅立っていくところで終わる。両親と共に、バス停でウィリーを見送るスキップ、ウィリーがいなくなった部屋でひとりベッドに寝て、壁際の棚に並ぶ親友の残していった品々に目をやる老犬に、後光が差して見えたような気がしました。スキップ、最高。
それと、ダイアン・レインはいい女優ですね。ジョディ・フォスターよりいいくらいじゃないでしょうか。父親役のケヴィン・ベーコンもよかったです。