ディナーラッシュ

  • 2000年、アメリ
  • 原題:Dinner Rush
  • 監督:ボブ・ジラルディ
  • 脚本:リック・ショーネシー、ブライアン・S・カラタ
  • 出演:ダニー・アイエロエドアルド・バレリーニ、カーク・アセヴェド、マーク・マーゴリス

DVDで鑑賞。
人気イタリアン・レストランがギャングに乗っ取られそうになる。
ルイス(ダニー・アイエロ)は、ニューヨークでイタリアン・レストランを経営している。息子がコック長をつとめるレストランは大人気。息子の新しい工夫を施した料理が批評家に受けがよいことが成功の一因だが、ルイスはオーソドックスなイタリア料理が好みで、意見が対立。息子は父が自分に経営をまかせようとしないことに苛立ってもいた。
ルイスはかつてはノミ屋もやっていたのだが、仲間だったエンリコがギャングに殺害されてしまう。そのギャングもノミ屋をやっており、ルイスの店のコックの一人がギャンブル狂で大きな借金を作っていた。コックの借金の取立てを理由にルイスの店にやってきたギャングは、レストランの経営権もよこせと迫る。ルイスは、ノミ屋はもうやめるが、レストランだけは渡せないと答えるのだが。……
冒頭、厨房内でコックたちが料理を作る様子がスローモーションで流れる中、ルイスやエンリコが自分たちに絡んでくるギャングについて喋る声がかぶさる。映画の舞台となるレストランを見せ、この物語の背景を説明。やがて、エンリコが射殺され、レストランでの一夜の情景が始まるのだが、音楽と共に映像がよどみなく流れ、レストランの厨房内、客の対応をする店員、さまざまな客を含めた店内の人々の姿へと刻々焦点を移しながら、レストラン内で見られる人間模様を描き出している。
音楽と調和した映像の流れの心地好さに乗って、最後まで飽きずに見られたが、もうひとつスジが弱い印象が残った。役者はみなうまく、アンサンブルの見事さで佳い映画になっていたと思うが、主演のダニー・アイエロなどはうまい役者なのだし、ドラマがすべて終わった後、ああ、そういえばああだったな、と後で思い出せる場面が作れた筈なのになあ、そんな欲が出てしまう。この監督としては、そういう昔風の映画にはしたくないというのがあったのかもしれないけれども、息子のヌーヴェル・キュイジーヌに物足りない思いをするルイスのような気持ちに観終わった後なってしまった。
この映画には美しいイタリア料理が随所にちりばめられている。ほんとうに美味しそうだ。戦場のような厨房できびきびと仕事するコックの動きもうつくしい。だから、それでもう、いいのかもしれない。あまり欲を出しすぎてはいけないのかもね。