「映画の興行が良くない」

どうしてみんなは映画館に行かなくなったの?映画館に閉館の波 - アルファルファモザイク
これ読んで思い出したのが、週刊文春10月20日号の小林信彦のコラム。「映画からラジオまで」と題して、原発事故の東京新聞の報道から始まって、映画、テレビ、ラジオについて書かれていたのだが、その中で『キネマ旬報』十月下旬号の<大高宏雄のファイト・シネクラブ>を、大震災後の状況と映画界をつなぐ文章として取り上げている。週刊誌も旧号になっているし、引用しようかと思ったが、そうすると小林信彦経由での「キネマ旬報」の孫引きになってしまうので、興味のある方はキネマ旬報十月下旬号を図書館ででも読んでみてください。
その中に「映画の興行が良くない。」と書かれていて、具体的には昨年より四百億円近く減少しており、この十年間で最低、1990年代末の映画界とほぼ同じで、しかも当時より劇場数は数段多くなっている、とのこと。既に興行の各分野でリストラ、閉館といった事態がはじまっていると述べられています。
田舎に住んでいる私などは、1990年代以降そんなに映画館が増えていたのかというおどろきがあるんですが、考えてみると、自分が中高生のころ行った映画館はほとんどつぶれたけれども、シネコンが行ける場所にできてるんですね。田舎でも、スクリーン数は増えてるということなのかな。
小林信彦といえば、『流される』(文藝春秋)が出てます。私が持っているのは単行本ではなく作品が掲載された『文學界』2011年3月号になりますけれども、自伝的小説というのでしょうか。先月号か先々月号かの文藝春秋では最新作について著者自身が語るインタビューが自社本宣伝ページに載っていました。
その『流される』で主人公が大学卒業する年が大変な就職難の時代で、なかなか就職先が見つからず、親類の伝手を頼って映画会社の重役に会わせてもらうくだりがある。その日本映画界でもっとも派手な映画会社は求人広告を出していない。「事実、新人を必要としていないのだった。」ということで、その重役はこんなことを語った。

「日本映画はいくらでも人が入るから、今、結構に見えるけれど、ハリウッドはそうでもないのだよ」
そして立体映画やシネマスコープは、テレビの脅威から逃れるために作られたものだ、と説明した。
「このうち、立体映画は敗退しただろ。シネマスコープはまだましなのだが、劇場を改築しなければならない。私はその苦しみが日本にもやってくると思っている。新人を育てないわけじゃないが、その前に考えなきゃならないことが多いのだ」
(引用元:小林信彦「流される」『文學界』2011年3月号 p102)

これは50年代の光景。そして、脚本家の笠原和夫が本の中で「これからの日本映画はもうゲリラ戦しかできないだろう」という主旨の文章を書いたのが70年代。それから30年以上経ち、私は映画を観るのは好きだが一般のファン止まりで、映画界のことなどは知りようもないのだけれども、なんというのだろう、アイドル映画というのがなくなってしまったことが、日本では映画は芸能の主流ではなくなったのねという感慨をもたらしてもう何年も経つ。
いろいろ思いつくことは多いがまとまらないな。べつに映画が衰退してもいいじゃないかとも思う一般人でしかないからだろうな。旧作をDVDで観るだけでもお腹いっぱいになる今日この頃だし。はあ。
はてなではHALTAN氏が映画界の現状を憂え続けてますね。
http://d.hatena.ne.jp/HALTAN/
私ごときになると、ここまで続ける根気がもうないな。