週刊文春2012年10月25日号の小林信彦「本音を申せば」で、孫崎享の『戦後史の正体』が取り上げられている。小林信彦曰く「孫崎氏の本は、まさか、と思う読者のツボを丹念に押してゆく。時間はかかるが、一読にあたいする。」
小林信彦のファンとしては、うーむ、なのだが、うーむ? にはならないんですね。小林先生は文藝春秋2011年7月号の『「次の総理」は誰か』というアンケートに答えた識者68人の中のひとりとして登場して「もちろん、小沢一郎です」と答えている。その理由については
もともと、(消去法でみても)この人しかいないと、何年も思っていました。大マスコミその他の誹謗への私の反論を書くと、長くなるので、興味のある人はカレル・ヴァン・ウォルフレンの「誰が小沢一郎を殺すのか?」(角川書店)を読んでみてください。官僚・大マスコミ・アメリカによる陰謀のすべてが非常にはっきりと書いてあります。
(引用元:小林信彦『「次の総理」は誰か』文藝春秋2011年7月号 p96)
かつては自民党の小沢一郎のことを「ファッショのにおい」がすると忌み嫌っていた小林信彦ですが(参照)、その後、小泉純一郎へ一瞬期待したものの裏切られ、ずっと小泉政権をコラムで批判し続け、もう自民党はだめだ、政権交代が必要だ、となって、やっと民主党が政権奪取し、つかの間のよろこびを得るものの、その民主党政権によって期待が次々に裏切られる。その果てに、「いま期待できるのは小沢一郎しかない」となってしまっているんですね。小林コラムを読み続けているファンなら、わかります。ラジオ番組を聴いて田中康夫あたりから影響を受けていることもコラムにお書きになっていますからね。(テレビはあまり観ないそうだし、大新聞は信用できないとも言ってます)
私にとって小林信彦のコラムは、まずアメリカ映画のこと、次に、日本の芸能人、あとは小説や東京の街並みのことが要チェック事項で、政治など時事感想は参考になることも多いけれども、考えが合わないことも目立つ。それだけです。小林信彦はこう考えているのか、それが読めればそれでいい。
で、わりとこういう人、つまり小林先生みたいな人が、私なんかが想像するより多いのかな、というのが、最近思うことなんですね。
もう民主党を出ていってしまいましたが、小沢一郎は民主党の中で唯一、かつて与党だった頃の権力中枢の周辺部の余韻が漂っていて、政権を取ったものの勝手がよくわからない風に見えがちな他の民主党の政治家よりは、古き良き与党につながる安定感をかんじさせる政治家なのかもしれませんね。実体は古き良き自民党を破壊した男なのにも関わらず。
なんにせよ、小沢一郎のファンにとっては、小沢一郎の失脚、あれはそういうことだったのか、と、孫崎享の本を読むと納得できるようなんです。小沢が四億円の出所を説明できずに有権者の信用を失ったのも、アメリカの陰謀なんでしょうかね。
孫崎本売れてます現象のひとつとして、メモしておきたい、小林コラム雑感でした。
今回のコラム、なぎら健壱の『町の忘れもの』(ちくま新書)の紹介が、よかった。