佐々木俊尚による『戦後史の正体』批評は常識的なだけ

朝日新聞での佐々木俊尚による『戦後史の正体』の書評に対して、孫崎享は次のようにツイッターで反論をしているのですが

冒頭「ロッキード事件から郵政民営化、TPPまで全ては米国の陰謀だという本。米国が気に入らなかった指導者は全て検察によって摘発され、失脚してきたという。著者の元外務省情報局長という立派な肩書きも後押ししてか、大変に売れている。しかし本書は典型的な謀略史観でしかない」。
わずかこれだけの行でも全記述に疑問がある。事実と違う。「米国が気に入らなかった指導者は全て検察によって摘発され、失脚してきたという」、私の「戦後史の正体」のどこにそんなことが記述してあるか。
日本の政治家を追い落とすパターンを(1)占領軍の指示で公職追放、(2)検察基礎、(3)政権内の主要人物切り捨て、(4)党内反対勢力高める、(5)大衆動員と分けた。この分類分けをしている事だけ見ても「米国が気に入らなかった指導者は全て検察によって摘発され、失脚してきた」という記述は間違いである。

http://togetter.com/li/381997

「米国が気に入らなかった指導者は*によって失脚してきた」
このプロットの「*」の部分に、上で孫崎が挙げた1,2,3,4,5を順次入れていけばよい。プロットは同じで、取り入れられるガジェットが変わるだけです。
佐々木俊尚の批判は、孫崎が『戦後史の正体』でやったような、先にプロットを作ってそこに事実をうまくあてはめていくというのは歴史を記す手法として邪道である、ということです。その邪道なやり方を指して「謀略史観」だと言っているのです。
そして、この佐々木俊尚の見方は極めて常識的なものでしかありません。
批判の主眼をわざとそらして細部の事実性に焦点をずらし自分の言い分を正当化しようとするのは、歴史修正主義者がよくやることです。上のツイッター孫崎享のやっていることは歴史修正主義者のやり口と大差ありません。
もっとも、この『戦後史の正体』という本は、厳密には歴史の本ではないでしょう。鳩山由紀夫小沢一郎復権させよという政治的なプロパガンダのための本です。だから、鳩山由紀夫小沢一郎を支持する人たちがこの本を支持するのは、ふしぎでもなんでもありませんし、歴史学者が本業の時間を削ってまで批判する気にならないのも仕方ないことでしょうね。