- 作者: 笙野頼子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/07/31
- メディア: 単行本
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自分が難病であることを知らされたことで、著者は前とはちがったものごとの見方ができるようになり、療養を通して日常生活にも変化が生じる。
そうして著者はこれまでの笙野頼子の活動をふりかえる。難病と闘うことで得た新しい観点から語られるメイキング・オヴ・笙野頼子。
この本だけでももちろんOKですが、これまでの笙野作品のファンにはさらに楽しめる、味わい深い一品となっています。
私は笙野頼子の本を読むとき、読み始めるとどこからか伸びてきた大きな力強い腕に自分がすっと抱き上げられ、ページをめくるごとにあらわれる様々な情景や聞こえてくる音楽を楽しみながら、ところどころに自分が日頃感じながらもうまく言葉にできないもどかしさを覚える事象の核心が篆刻として白い紙にくっきりと押し印されているのを発見しつつ、すーっと出口まで運ばれていく、そんな体験をする。
読書することでエネルギーがもらえ、言葉が、文章が、日本語が読めることが自分の持つ力のひとつであることを実感できる。
そして、読んだ後、自分のことをふり返り、本の中での出来事と照らし合わせていろいろなことを思う。これまで知らなかった気づきを得る。
私にとっては、小説を読むよろこびを最も明確に教えてくれる作家が笙野頼子なのです。
今年、いちばん読めてうれしかった本でした。