『世界』no.875 : 柳原良江「収奪と利益が絡み合う卵子提供ビジネス」

http://www.iwanami.co.jp/sekai/
自民党の生殖補助医療に関するプロジェクトチームは国内での卵子提供の容認に向かって動いているが、仮にそうなったとして、それは国民に恩恵をもたらすのだろうか。
「使い捨てられる女性たち」という副題がつけられたこの記事は、卵子提供ビジネスの現状と卵子提供に伴う問題点を顕にし、一部の富裕層が自分たちの都合で他者の肉体を利用するのは奴隷制と同じではないかと指摘する。
卵子提供ビジネスが合法化されれば得をするのは、富裕層と不妊産業だけではないのか。
興味のあるかたはぜひとも『世界』no.875 をお読みください。

参考:『卵子提供--美談の裏側』 予告編


記事中で紹介されていたドキュメンタリー映画の予告編。米国では2000年代後半から卵子提供者が自分たちの受けた被害を語るようになっているとのこと。しかし、斡旋業者やクリニックはまだ研究がなされていないということを「リスクはない」と言い換えて、宣伝しているそうです。

追記 2015-10-28 著者:柳原良江のブログ

代理出産を問い直す会 http://d.hatena.ne.jp/chapter4/

余計なことだが

自己責任というか“自分の意志で”というのがマジックワードと化し、女性の身体を切り売りする方向に世の中が進んでいるような気がする。生殖や性行為など、男女の身体構造的差異に立脚する領域ではとにかく安易に“男女平等”を言うべきではないのではないだろうか。
奴隷や家畜には性差や性別なんて洒落たものは必要ないわよ、と思っている富裕層はいつの時代にもいるわけで、大衆が彼らに都合がいいように自分からなることはないんじゃないかな。
これは私が、代理母とか卵子提供とか臓器提供とか聞くと即座に『家畜人ヤプー』を思い出してしまうせいもあって、よって極私的感想でしかないのだけれども、各人身体は自分のものだけという平等性はできれば守られて欲しい、と思っているのよ。
人間なんて愚かさからは自由になれないし、ほっとけば富裕層は「脳を若い子に移植したい♪」くらいのことは平気で言い出すだろうと思っているくらいでまちがいない。
ISISはこういうなんでも“自分の意志で”というのが絶対善みたいになってる風潮に反逆してるのかもね。結果的にむきつけに反時代的になってたり、見方によってはこちら側の世界をキッチュに戯画化して見せてくれてるようにもとれるのだけれども「あんたがその場の都合で言う“自分の意志”ってどれだけのものなの? 自由がーと言いつつやってることってこーいうことなんじゃねーの?」という。でも、とにかく、現状の“自由”について、それでいいのかよ !? と突き上げてるのよ、ISISは。
デモに参加した若い女性の写真が撮られて容姿がどうのこうの言われてそれが嫌だのいいじゃねーのともめてたのをネット上で見たけど、あれもブルカ着てれば起きない揉め事かもしれないし。(じっさいにはブルカは日光除けや砂埃除けというのが大きいのだろうけど)
ISISを支持するわけではないけれども、先進国に支配的な風潮に対する異論のひとつではあるし、まったく意味がないかというとそうでもないだろうしね。