めまい

知人の妻を尾行する任に就いた元刑事がその妻と恋に落ちる。
刑事スコティ(ジェームズ・スチュアート)は、犯人追跡中の事故がきっかけで高所恐怖症となり、警察を辞める。無職状態のスコティのもとに学生時代の知り合いから連絡があり、妻が不審な行動をとるようになり心配なので、妻の後をつけて様子を伝えてくれないかと頼まれる。スコティは友人の妻・マデリン(キム・ノヴァク)の尾行を始めるのだが、……。
午前十時の映画祭でこの傑作を映画館で観ることができました。うれしい! ヒッチコック映画の中でも特に人気が高い作品です。
舞台となるサンフランシスコの景色がいい。そしてスコティがマデリンを尾行するくだりが見ていてほんとうに映画の快感が味わえます。動的なシーンと、ドアを開けると鮮やかに咲く色彩、そのテンポ、呼吸、映像の流れとそこから見えてくる物語。
友人に頼まれて職務的にやっていることなのですが、スコティがマデリンを一目見た時から彼女に惹かれだしているせいで、私立探偵的な尾行にややストーカー的な色合いがにじんできて、そのせいでさらに興が増します。
キム・ノヴァクにとっては一世一代の名演技を見せた作品でしょう。当初予定されていた女優が出られなくなったせいで彼女に役が回ったそうですが、この映画はキム・ノヴァクでなければならない、そう思わせられるほど彼女が良い。
おはなしは、レディコミというか、ゴシックロマンスのアメリカン仕立てとでもいうのでしょうかね。でも、この映画で描かれているのは男女関係のハードコアでしょう。スコティは自分をごまかしていないという点で誠実だし、キム・ノヴァクが演じたヒロインは基本健康で人がよいのです。劇中ではそれが彼女にとっては仇となったようですが。
映画ならではのおもしろさを堪能できる作品ですので、ぜひ映画をご覧になってください。
そして、つけくわえますと、足首あたりの線はバーバラ・ベル・ゲデスの方がノヴァクよりきれいですよ。