第170回芥川受賞作において作者の九段理江が「執筆でのAI使用を認めた」という報道は、海外のメディアにも取り上げられた。実際には、小説中でAIが答える部分だけに使ったのだそうだが、生成AIが話題になっているため、AIが書いた小説が賞を獲った! という誤解を招く言い方が一時広がった。
著者はこの騒動から、この十数年に将棋界で起こった出来事を思い出す。2013年春、プロ棋士が初めて公の場でAIに敗れ、プロ棋士の存在意義が問われる事態となる。
しかしその後、棋士たちはAIを活用し自分の棋力を伸ばしていく。将棋界は人間とAI共栄の時代へ。その成果が、AIによる学習を完全に自分のものとした藤井聡太八冠だという。
また、AI同士の指す将棋に関心を示すファンがほとんどいないことからも、将棋界と同様に文芸においても人が作品を書く意義が消えることはないだろうと見る。
くわしくは『世界』4月号で読んでみてください。