中島梓『コミュニケーション不全症候群』ボイジャー・プレス / スティーブン・レベンクロン『鏡の中の孤独』集英社文庫

 

 

 

日本でも、アメリカや英国で思春期の少女の間でトランスジェンダー・ブームが起き、思春期ブロッカーの投与や外科手術を受けた後、成人してから当人が「トランスジェンダーではなかった…」となり、医療措置を受けたことを悔やむ事例が増えていることが報道されている。

 一時期は、思春期の少女の間で摂食障害が増え、日本でも問題視されていたのを思い出す。米英でのトランスジェンダー・ブームはそれを連想させる。

 上の二冊は、少女の摂食障害を取り上げている。中島梓のは「コミュニケーション不全症候群」の例として、後者は摂食障害のカウンセリングにあたった方による、思春期の少女たちによくみられる症例を理解してもらいたいとの思いから書かれた小説。

 中島梓のほうは、摂食障害につながる女性の悩みやとまどいから、BL小説が書かれ読まれ、BLを介して他の女性と交流することで前向きな生き方を獲得する一群がいることも紹介されている。

 

 女性の状況は、前よりよくなった面もあるだろうが、よりつらくなった面もあるのだろう。そして、おそらく永遠に変わらないであろう男女のちがいもあって、そこでつまづく女子はこれからも後を絶たないだろうと容易に想像できる。

 女子がつまづいても、やりなおせるように、陥穽に陥らないよう、陥っても助け出されるように、ならないといけない。

(女子の場合、思春期など、とにかく自分がちゃんとしないと、できるのだろうか、という不安から、弱い女子や成長の遅い女子を落とし込むことで自分の安定を保とうとするというのがあって、そこで足をかけられたり犠牲にされたりしないように、仮にそうなったとしても、また生き直せるように、そういう道や余地が残されていないと、いけないですよ。)