食い違う証言 李纓監督と有村治子参院議員

自民議員が出演者聴取 “靖国”監督が反発

2008年4月10日 00時57分

 映画「靖国 YASUKUNI」の中心的出演者で刀匠の刈谷直治さん(90)夫妻=高知県在住=から有村治子参院議員(自民、比例)が事情を聴き「刈谷さんらは出演シーンの削除を希望している」と主張していることが分かった。李纓監督(44)は9日、共同通信のインタビューで「出演を納得してくれていた夫妻を変心させた。許せない介入だ」と訴えた。

http://www.chunichi.co.jp/s/article/2008040901000995.html

四国新聞に同じ内容でさらにくわしい記事が出ていました。一部引用して両者の言い分をメモしておきたいと思います。
「介入、変心させた」と訴える李纓監督の説明。

監督によると、映画は完成後、夫妻に見てもらった。
「奥さまは刈谷さんの刀の世界がよく分かっていない面があり(映画の内容に)ショックを受けていたが、説明をすると、二人とも納得してくれた」という。
その後、今年2月ごろ、夫妻が「この映画は反日」と聞かされ非常に不安がっていると知り、映画の意味をあらためて説明。最終的には「どこでも上映してください」と了承を得たとしている。
制作過程について李監督は「ドキュメンタリーで大切なのは人間関係。長い時間をかけ段階を踏んでコミュニケーションをとってきた」と述べ、「刈谷さんは非常に優しい、職人の魂を持っている方」とたたえた。
監督は1989年以来日本に住む中国人で、日本映画監督協会に所属している。
(引用元:四国新聞2008年4月10日)

次に、「監督の話は事実無根だ」とする有村治子議員の言い分。

有村治子参院議員の話
監督の話は事実無根だ。確かに刀匠の刈谷直治さんには、人を介して承諾をもらい、3月25日に電話している。監督のインタビューの記事を見て、(9日夜)もう一度電話した。「わたしが電話したから気持ちが変わったのか」と尋ねたが、刈谷さんは「全く違う」と言っていた。監督と助監督が来た際に、考えていたものとは違ったので「こんなものじゃ困る」と言ったということだ。2月にも、近所の人に映画のことを知らされ、助監督に電話をかけ、映画を見せてもらうように頼んだが「忙しくて用意できてない」と言われたとのことで、今でもその状況は変わらない。刈谷さんは「名前を映像を外してほしい」と監督に言ったということだし「了承を得た」ということもないと言っている。わたしは750万円の助成金が適切だったかという趣旨で国会質問した。

(引用元:四国新聞2008年4月10日)

ここまで言い分が食い違うとこの時点ではどうとも決めつけられないというか、この件についてさらなる取材を期待するしかないですね。
前に四国新聞で映画『靖国』上映中止について寄稿していた鈴木邦男氏は、この映画で刈谷刀匠を見て、涙が出そうになるほど感動したと書いていたんだけどな。
稲田議員といい有村議員といい、助成金にこだわるのがそもそも変だと私は思いますが、刈谷さんの困惑や、「この映画は反日」と言ったりする人がいるということももっと知りたいという気分にさせられる。
思い出されるのは、サンプロでやっていたシリーズ「言論は大丈夫か」の「鑑定医はなぜ逮捕されたか」、情報源となる人が取り締まられ、結果としてジャーナリストの取材活動ができにくくされていっている現状をレポートしていた番組(参照)。
また、NHK番組改変問題も思い出されます。政治家が圧力をかけたのかけないのといった問題に加えて、NHKが編集した作品がバウネットの期待を裏切る内容だったという点で、編集権が問題になったこと。NHKの件では、制作現場の意向を無視して上層部が内容を変えてしまったということだったので、東京高裁判決では現場の編集権を尊重するよう求められたのでしたよね。
NHK番組改変認定 東京高裁判決/現場の編集権の尊重求める - 2007年1月30日(火)「しんぶん赤旗」
今回の件だとバウネットの立場が刀匠になっちゃうのかね?
NHK裁判はまだ続いています。
NHK裁判
ついでといってはなんですが、岩波書店『世界』2008年5月号に李纓監督のインタビューが出てます。
http://www.iwanami.co.jp/sekai/

さらに追加 2008年04月09日 映画『靖国』に関する緊急記者会見 オンデマンド配信中!

OurPlanet-TV
http://www.ourplanet-tv.org/whats/2008/20080409_12.html