ゾディアック

DVDで鑑賞。
アメリカで起きた "ゾディアック・キラー" 殺人事件の捜査と取材の過程を追った実録物。
正直、長かった。観ててしんどかったですよ。家でDVDで観てるからいいようなもので、映画館で観たらしんどくてたまらなくてげんなりして終わったかもしれないです。
でも家でDVDで観るとなると、途中で休憩もとれるし、犯罪実話としてのおもしろさはありましたね。ゾディアックの犯行がどのようなものだったか、犯行声明文を送りつけられた新聞社はどうしたか、捜査はどのように行われたか、それがわかります。時間が長くなるのは仕方がないのもわかるのですね。公式には未解決のままです。
1969年、車でデート中の男女が殺害され、警察には犯人らしき男から犯行現場を教える電話が入り、新聞社には暗号文のついた犯行声明文が届けられる。
サンフランシスコ・クロニクル紙の記者はこの事件を調べはじめ、彼の同僚である暗号やパズルの好きなマンガ家が事件にひどく興味を示し、取材中の記者に近づいてくる。最初はおたくっぽいマンガ家を敬遠していた記者だったが、マンガ家の知識にも一目置くようになり、マンガ家は自身で事件の資料を集めはじめる。
警察の捜査も続くが、容疑者を確定するところまでの証拠は得られない。そのうち、マスメディアで大きく取り上げられた事件に変な人たちが反応して警察をわずらわせるようになる。
殺人事件の描写が、残虐だがそっけなく、劇的な盛り上がりに欠ける印象を受けるが、その盛り上がりのなさが実際の事件をそのまま再現しようとした結果にも見え、徹底的な取材に基づいているという映画の売り文句が正しいような気がしてくる、そんな作品ですね。新聞社や警察の動向も、淡々と日常の雑然さを伴って描かれています。新聞社や警察の内部を見る作品でしょうね、これは。
劇中で「ダーティハリー」を観たゾディアックを捜査している刑事の反応がちょっといいですよ。「ダーティハリー」は、ゾディアック事件にヒントをもらって作られたそうですが。
役者はみなうまいです。特にトースキー刑事を演じたマーク・ラファロが印象に残りました。顔は、前にも見たことがあるようなんですが、名前まで覚えてなかった。声がいいんですよ。ちょっとかすれたような声で、静かな調子で喋るんですけど、すごくよく声が聞こえる。耳に残るんです、心地好い声音として。あと、ジョン・キャロル・リンチがまたキモいおっさんやってて、じつにはまってて、こういうおっさんの係の人になってしまいそうで少し心配ですね。
デビッド・フィンチャー監督、『セブン』と『ファイト・クラブ』がどちらもアガサ・クリスティーの小説を思い出させるようなおはなしになってて、でもなんか才気がぴらぴらしたかんじであまり好きになれなかった監督なんですね。特に『ファイト・クラブ』は、小説ならともかく映画でこんなことやられてもなあというのに加えてブラッド・ピットの芝居が鼻について、どうしようもなかった。
『ゾディアック』は、とにかく実話再現風を徹底してやったということなんでしょう。才気が鼻についてなんてことはまるでなかったけど、長時間淡々とし過ぎて見ててしんどかった、でも、犯罪実話読むの好きな者としてはやっぱり見てよかったな、そんなかんじでした。