目次
まえがき
第一部 凶行
1 供述調書
2 犯行の経過
第二部 取材の核心部分 1
3 新右翼とその周辺
4 日本社会の右翼
第三部 取材の核心部分 2
5 ある新興宗教の影
6 深まる謎
第四部 波紋
7 捜査と取材
8 現在、過去、そして未来
あとがき
本書で参照した文献についての補足
『新聞社襲撃 テロリズムと対峙した15年』(岩波書店)の続編にあたるもの。赤報隊の起こした事件は2003年3月にすべて公訴時効となっていますが、著者はその後も事件についての取材を続けており、その取材の過程で知ることになった「事実」をまとめたのが本書です。事件については本書をお読みください。
取材過程が読みどころのひとつになっていますね。こういうのを読むと、ネット上で検索してまとめサイトを作ったりしていい気になっているってすっごく恥ずかしいことだとわかりますよ。ネットでも、ニュース記事がソースとされることが多いですが、そういう記事を書くのがどれだけ労力を要するか。
また、まえがきにあるように、取材して得たものをどう記すかということにも神経を使われているのがわかります。
ネット上では、うわさや口コミがどのように伝わっていくか広がるか人にどう受け取られるのかが可視化されており、見る人によっては(子供のころ仲間外れにされいじめられたり生贄役をふられたことがあったりする人とか)それだけで神経に触ることもあるでしょう。でも、現実ってああなんだよねって、知っておくしかないし。
そういう中で、こういう本を読むと、取材して事実を本にまとめて伝えようとすることがどういうことかあらためて考えさせられますし、また、記した側の配慮を読み取ることが読む側にも必要なことが分かります。それだけに、読者の側が衰えることで消えるものもあるのではないか。新聞雑誌が読まれなくなって消えていくものってあるんじゃないかなあ。
赤報隊事件当時は奇異にひびいた「反日」という語が、現在はネット上でカジュアルに使われています。本書では、朝日に街宣にやってくる在特会の姿など、この30年の日本の世相の変化もとらえています。そのせいか、本書の中の老右翼の「予言」が沁みてくる。
犯罪実話マニアの諸兄、必読です。