ボーダー

DVDで鑑賞。
ニューヨークで起こる連続殺人事件を捜査する刑事二人の物語。
ターク(ロバート・デ・ニーロ)とルースター(アル・パチーノ)は長年コンビを組んできたニューヨーク市警の刑事。現在、連続殺人事件の捜査に加わっている。殺されているのはすべて法をすり抜ける形で放免されていた犯罪者で、犯行現場には詩を書いたカードが残されていた。殺害された犯罪者を揶揄し呪うような内容の詩だった。
捜査班の中からは、犯人の見事な射撃の腕と被害者の共通項から、これは警察官の仕業ではないのかと疑う声も上がる。タークとルースターのコンビはある過去の出来事を思い出す。また、日頃の言動から、刑事同士の間でも互いに観察し合うようになってしまうのだが……。
開巻、刑事に扮したデ・ニーロとパチーノが並んで射撃訓練をしている姿が映る。的を睨むデ・ニーロの顔、パチーノは大きな目がアップになる。射撃を始める二人、そこにキャストやスタッフの名前がきれいなデザインで挟み込まれる。射撃音、落下する薬莢、短く映し出される二人の普段の様子。
この出だしのテンポと絵の調子が、70年代あたりの犯罪もの、中規模予算の娯楽作品のノリを感じさせる。
これは、デ・ニーロとパチーノを観るための作品。『ヒート』以来12年ぶりの本格共演ということだが、『ヒート』でのパチーノの演技には淀川長治が大きな声を出しすぎるのよ!とダメ出していたのを記憶する。パチーノのほうが、デ・ニーロと共演を意識しすぎていたように見えた。この二人、どちらも『ゴッド・ファーザー』が出世作となり、しかも両方ともイタリア系の映画スターなので、くらべられることが多かったのかもしれない。
今回の映画『ボーダー』では、二人並んで座ると、ほんとにずっとコンビを組んできた仲間同士に見える、しっくりした共演ぶりだった。そして、だんだん二人の映画スターの姿にだぶるように見えてくるおはなしにもなっていた。
映画全体の印象は昔の東映映画によくあったような刑事もので、出てる女優の別嬪さ加減も70年代犯罪映画風。おどろくような出来ではないものの、デ・ニーロとパチーノ二人だけでとりあえずちゃんとまとまってしまった、そんな仕上がり。
場面の移り変わりごとに、すっと車が乗り入れたり、ビリヤードの球が弾かれて散ったりする絵が音とともに挿入され、メリハリが出ている。ただ、全体にだれささないようにがんばりすぎているようで、MTVじゃあるまいしとちらりと思ってしまった。
謎解き面でひっぱる手法もあざとさがあるのだが、アンフェアとまでは思わない。しかし、ああいうことしなくても、話の運び方でうまく見せることができたんじゃないかとも思わされた。
名優二人が出ているのである。正攻法で決めて欲しかった、というのはぜいたくになるのかな。