スティーヴン・キング『ドロレス・クレイボーン』(訳:矢野浩三郎/文藝春秋)

メイン州の小さな島。65歳の寡婦ドロレス・クレイボーンはずっとこの島に住み、子供たちを育て上げた。長年メイドとして仕えた女主人・ヴェラ・ドノヴァンの殺害容疑を晴らそうと、彼女は取調室で語り始める。ヴェラと彼女はどのような関係だったのか。そして、1963年7月20日皆既日食のとき、彼女の夫が死亡したのは何故なのか。
最初から最後までおばさんの語りが続き、それを読むのが止められなくなる。久しぶりに読んだスティーヴン・キングはやっぱりおもしろい。この作品はミステリー風の一代記とでもいうのかな。怪奇ものやSFものが苦手な人も、このおはなしなら楽しめるのではないか。
キング作品の映画化は失敗例も多いのだが、『ドロレス・クレイボーン』を映画化した「黙秘」は、脚色がうまく、映画として成功していた。ドロレス・クレイボーンの役をキャシー・ベイツがやっていた。
性悪になっても、子供たちだけは守ってやりたい。貧しい田舎の女が意地を持って生き抜いた姿に、こわさとやさしさが交錯し、皆既日食ダイヤモンドリング を思い出す。
キングはこの作品を、母親に捧げている。