DVDで鑑賞。
元警官の死亡現場清掃業者が殺人事件に巻き込まれる。
元警官トム・カトラー(サミュエル・L・ジャクソン)は、死亡現場を清掃する仕事をしながら、妻の死後ひとりで娘を育てている。
ある屋敷内の清掃を頼まれ処理し、後にその屋敷を訪ねたが屋敷の女主人はトムの会社に清掃が頼まれたことを知らなかった。死亡現場の状態とその屋敷の主人が失踪し捜索願いが出されたことから、トムは殺人事件現場だったのではと疑い、元同僚から事件について聞き出そうとする。そして、彼が警官を辞めるきっかけになった事件や、かつての同僚たち、さらに自分自身にもつながってくる事件の背景が見えてくる。
冒頭、高校の同窓会で現在の自分の仕事を戯画化して話すトムの口上に合わせて、彼の片付ける死亡現場のわかりやすい例が映像で見せられる。死体が持ち出された後の汚れ、特別な洗浄剤を用い消毒しながら行われる仕事。この清掃業の様子が映画のいちばんの見所だ。
殺人事件を軸に、トムと娘や同僚との関わり、人間模様が描かれる。おはなし自体はテレビの2時間ドラマみたいだったが、役者がうまいので、それぞれの登場人物のドラマは鮮やかに映る。
妙に絵がスタイリッシュ。全体の流れが淀むことなくテンポよく絵が切り替わりつながり、見ていて心地いいが絵の流れでだまされているようなかんじもした。
主人公が鍵をかけたり、机に物をしまったり、使ったタオルを決まった場所に納めたりするところがそれ自体切り取るように撮られており、挿入のされ方がひとつの場面のはじまりを告げる区切りのように見える。登場人物が対話する場面の中でも、物がきっちり映し出されて印象に残る箇所がある。おはなしに直接絡んでくる物もあれば、そうでないものもあったが。
ミステリーとしては弱いが、きれいな映像の流れと役者の心理描写でおはなしを見せてくれる、ちょっとジャッロ風な味わいのあるアメリカ映画だった。時間が90分なのがいい。