テレフォン

DVDで鑑賞。
米ソ関係悪化を目論む男のアメリカでの暗躍をソ連から派遣された大佐が阻む。
デタントにより米ソ関係も変わり、KGBはひとつのプロジェクトを封印する。しかし、米ソ間が和解の方向に進むことをよろこばない一派もいた。KGBのダルチムスキー(ドナルド・プレザンス)もその一人で、アメリカに渡り、封印された工作活動を独断で始動、国際紛争に導こうと暗躍しはじめる。ダルチムスキーの暴挙を止めるべく、ソ連はボルゾフ大佐(チャールズ・ブロンソン)をアメリカに送り込む。
原題が"TELEFON"なのは、英語の電話のtelephoneではなく、ソ連の工作活動のコードネームの「テレフォン」だからなのだろう。スパイもの風だが内実はサイコものに近い。戦争の危機を回避するのが目的なのだが、実際には一人の狂った犯罪者を追うおはなしだ。
雪が積もった寒そうなモスクワの光景から始まり、ソ連がサイコなテロリストと化したダルチムスキーを追っていることが描かれる。アメリカでダルチムスキーが行うのは、ソ連人であるという記憶を消された状態でアメリカで生活している工作員に電話をかけること。電話でロバート・フロストの詩の一節を聞くと、催眠術にかかったように工作員たちが動き始める。米軍の基地に自爆テロしたりするのだ。おはなしがよく出来ており、退屈しないで楽しめる手堅い娯楽作品だった。103分という長さもいいよね。
ダルチムスキーを演じるドナルド・プレザンスによる詩の朗読がいい。舞台出身の役者だから朗読がうまいのは当然として、うまい役者は声がいいし、イギリスの英語なのがアメリカ映画の中でこういう謎の人物を演じるのには活きるようだ。「ダイ・ハード3」でブルース・ウィルスに電話をかけてくる犯人を演じたのがイギリスの役者ジェレミー・アイアンズだったのを思い出す。
アメリカ映画の中でのイギリス英語が醸し出す特有の雰囲気というのはあるのだろうなと頭では想像できるのだけれども、アメリカ人にじっさいにどういう印象を与えているのか、当然私には実感はできない。イギリスはアメリカより古い歴史があって、英語のご本家だし、だとしたら、東京が舞台になって登場人物が標準語でしゃべっている中に京都弁の人が闖入者として入ってくるようなかんじになるのだろうか。これも頭でっかちな想像だな。というのは、この映画のテキサスの酒場にダルチムスキーが現れたときの様子は、大阪の土着的な居酒屋でみんなが大阪弁でしゃべって和んでいるところに、突然ぱりぱりの東京弁を喋る見慣れない男が入ってきたようなかんじに見えたから。
この映画は子供のころテレビで観ていた。チャールズ・ブロンソンは日本でも大人気のアクションスターだった。子供のころはよくわからなかったが、今回見直すと、リー・レミックがすごくいい。美人で芝居がうまい。頭がよさそうでべたべたしないセクシーさもこういう映画にはぴったりで、いい相手役にめぐまれたブロンソンはしあわせでしたね。CIAの若い職員役でタイン・デイリーが出ていたが、コメディの才能がありそう。
クライマックスはテキサスで、ガラガラヘビが人の争いに巻き込まれて犠牲になるのが胸痛んだが、クライマックスそのものを体現してもいた。やはり、クライマックスはテキサスだな。テキサス。