村上龍「オールド・テロリスト」第二十二回 文藝春秋2013年4月号

ナガタが分析したデータを基にミイラのような老人に指針を求めた関口だったが、警察には頼れない、信用できる政治家か官僚に相談せよと言われただけだった。困惑する関口、しかし、かつて集団不登校に端を発する事件を取材した際に知り合った山方という名の文部官僚を思い出した。関口はいまは退官した山方に連絡をとり、会ってもらえることになったのだが。……
ミイラのような老人の話すことは現実感を覚えることがむずかしい途方もないもので、情報の切れ端をキーワードにして検索しまくることでなにかわかったような気になろうとするマツノ君の振る舞いは、ああこういう人いるな、こういうことあるな、と読んでて思った。
私は年齢的には関口に近いだろうが、かつて『希望の国エクソダス』でも関口の目を通して描かれたコンピュータやインターネットの利用に長けた中学生の像は、自分がしばしば一部の若い人に対して持つ印象と重なった。あの物語中では関口はその中学生に対して好意的であったせいか、描出された彼らの特徴についての解釈もいい面を重視する傾向があった。しかし、今回のマツノ君に対しては、関口の脳内には身もふたもない感想がよぎるのみで、関口は『希望の国エクソダス』の頃はインターネットに新技術としての輝きがあり、それに通じていることが優位性になり得る時機があったのだな、いまはもうただのインフラになってしまってるけれども、と、時代の流れを感じるのだった。
さて、関口から話を聞かされた山方の反応は意外なものだったが、これからどうなるのか。チェーンスモーカーの山方の動きに興味が湧きます。次号に期待、です!