関口とカツラギを乗せミツイシが運転するカローラは、御前崎へと向かい、浜岡原発を意識した関口は不安になる。やがて御前崎港の駐車場に着き、ミツイシは二人を漁港近くの食堂へと案内してくれた。平日の昼前、空いた食堂の中に一人だけ老人が座っていた。それは関口がこの状況で最も会いたくない人物の一人だった。……
漁港へ向かう道中、車内に流れる音楽をきっかけに、ミツイシとカツラギは会話をし始める。そのうち、ミツイシが妙に熱を入れて一席ぶちはじめ、関口はその話を聞いて、ミツイシの言うことはまちがってはいない、でも……、と思い、ミツイシの語りを読んでいた私も関口と同じような感想を持った。じつはとくにこういう小説を読んでいるときは、ミツイシが言っているようなことに自分も同調して楽しみたくなりやすいのだけれども、関口を通してそういう自分を見返すことができ、でもこの小説「オールド・テロリスト」だってとにかくおはなしの続きが読みたくてずっと連載読んできてるんだし、だからやっぱりミツイシの言っていることはまちがっていないんだけれども、ロマンチック過ぎるし、ミツイシみたいな強い男が言う生きるや幸福というのは女とはちょっと関係ない次元で咲くロマンのお花畑だったりするし、うーん、でも、やっぱり私、そんな女の身も蓋もない現実的なおはなしよりは、アッパーオヤジがテロに走るような物語読む方が好きなのよねえ、それを読める幸福があるから生きてて楽しいと思えるのよねえ、などと、いろんなことを考えさせられましたね、関口らが御前崎港までドライヴしてる時に。
そして、ドライヴ中に、芸術家がどんな人物かなんて関係ないんだ、と言ってたのが、終わりの方で、テロリストがどんな人物かなんて関係ないんだ、というのと、合わせ鏡みたいになってくるあたり、いいね。
老人たちが現れて場面が活気づきはじめた「オールド・テロリスト」。これはたしかに、これまでの村上龍作品にはなかった展開かも。そして、キニシスギオには四国から参加している方もいらっしゃるのがわかり、なんだかわくわくしてきました。いいのかしら、原発の近くでキニシスギオが昼間から酒飲んで。ああ、次はどうなるの、待ちきれない、続きを早く!