ナインハーフ

GyaO!で視聴。
離婚した女性が一人の男と出会って別れるまでを描く。
画廊に勤めるエリザベス(キム・ベイジンガー)は離婚したばかり。自分が見出した画家の個展の準備で忙しい。ある日、偶然見かけて惹かれた男性(ミッキー・ローク)にのみの市で声をかけられ、つきあい始める。魅力的な男だが、生業に相場をやっているという以上のことを一切語ろうとせず、エリザベスとのつきあいは二人だけの秘密に保とうとする。エリザベスは不安を覚えながらも、だんだんとその男にのめりこんでいく。……
エロチックで美麗な映像が話題になり、この監督の前作「フラッシュダンス」もそうだったが、音楽と映像のはまり具合がMTV的と言われ、公開当時はそれが斬新だと評されていたのを思い出す。今見るとむしろ映画全体はよどみなく流れており、美しさで魅せる間を作中に織り込むためにつなぎとなる日常場面をじつに自然に描き出しているライン監督のうまさを感じる。
配役で一番最初に名前が出るのはミッキー・ロークで、このころはまだ太っていないね。エリザベスに「あなたはいつも微笑んでいるのね」と言われるのだが、正体を女に見せようとしない、ちょっといかがわしい雰囲気のある魅力的な男を的確に演じている。だが、劇中のロークは添え物というか置物というか、そんなかんじですね。
この映画の主役は、女主人公エリザベスを演じたキム・ベイジンガーでしょう。今回見直して、ベイジンガーはいい女優だなとあらためて認識しました。公開当時はエロ描写が話題になって、彼女の演技のよさがあまり語られなかった記憶がある。惹かれた男には甘くなって、そうなってしまう自分やそうさせてしまう相手を愛しく思うのだけれど、完全に性的な主従関係のような状態になるのは抵抗感が拭い切れず、ついに限界が来る、そんな女性をうまく演じています。
しかし、今見返すと、なんで当時エロいエロいと騒がれたのかよくわからない気もしてきますね。穏当な恋愛映画、むしろ平凡な女性の自分探しの一幕を描いているといっていい内容だし、70年代だってもっとエロい場面のある映画はいくらでもあったんじゃなかったかな。SMというのでもないのですよ。そういうのを期待して観ると肩透かしをくらうでしょう。