シークレット・ウインドウ

DVDで鑑賞。
作家の元に自作を盗用されたと訴える男がやってくる。
主人公の作家モート・レイニー(ジョニー・デップ)が、妻の浮気現場に踏み込むところからはじまる。その後、家を妻に明け渡し、湖畔の別荘で執筆中のモートの姿が描かれる。離婚の話し合いも済み、妻は現在、離婚証書に彼がサインしてくれるのを待っている状態。しかしモートはまだそうする決心がつかない。
仕事も進まず、疲れ果てたモートの元に、ジョン・シューターと名乗る男(ジョン・タトゥーロ)が訪れる。ミシシッピから出てきたというその男は自分の書いた小説をモートに盗用されたというのだ。心当たりのないモートは妙な男だと見てまともに相手にしようとしない。しかし、その日から、家の備品が壊されたり、愛犬が殺されたり、ジョン・シューターによる嫌がらせがはじまる。
スティーヴン・キングの原作は読んでいない。私のキング体験は『IT』あたりで止まっており、最近の作品は知らない。キングの小説は、読んでいる時は子どものころ見た怪奇映画やSFの記憶を思い出させる場面が出て来て、とっても映画的な印象を受けるのだが、映画化はあまり成功していない。思うに、キングの小説の読み応えというのは、登場人物の内面をぐちぐちぐちぐちこれでもかと具体的に書いているのを読むところにあって、映画にするとそこらへんが小説みたいには描けないのでスカスカしたかんじの仕上がりになってしまうのではないだろうか。場面としては、キングは恐らく意識的に大昔のホラーやSFの世界からの光景を採用しており、あれをそのまま映像化すると昔の娯楽映画の陳腐な焼き直しになりやすいというのがありそう。
この映画では、キングの小説の肝である主人公の内面描写を、ジョニー・デップという役者を使ってうまく表現することに成功。おはなし自体はとくに新味はないのだが、映画の中でデップにうまく主人公の状態を演じさせている。この映画、ジョニー・デップに支えられた小品佳作といっていいのではないだろうか。
しかしこの映画見たからといって、原作を読んでみたいという気にはならなかったな。おはなしよりはジョニー・デップという役者の魅力が大きい映画だった、そんなかんじ。スティーヴン・キングだと、やっぱり妖怪や亡霊や謎の巨大生物ががんがん出てくる物語のほうが読んでてずっと楽しそう。
キングっぽいな、と思ったのは、黒くて山高でつばの広い帽子、これがミシシッピの農夫が被るような帽子だと主人公の作家はイメージしてて、ミシシッピからやって来たというジョン・シューターがそういう帽子を被っているんですね。それで、主人公がそういう帽子を被って柄の長いシャベルを持って立った姿、これが、昔のアメリカのスプラッタ・ムービーのポスターの絵を思い出させるんですよ。プッツン農夫が人殺しまくる映画ね。妻に裏切られて苦悩する男の話なんだけど、こういうイメージがごろんと転がり出てくるところが、やっぱりキング。
でもね、映画が終わった後、主人公の愛犬のことを考えると、この男、許せないと思ったな。許せん。うーん、これ、ひどい話だったんだ。。。