被災地に借景した少女の成長譚

美しい顔 北条裕子 http://book-sp.kodansha.co.jp/pdf/20180704_utsukushiikao.pdf
震災を主題にした小説ではないでしょう。震災というより、#MeTooの気配を感じましたが。
出だしの「金をくれ」にドン引きして主人公に対して好感を抱けないまま、それでもするすると読めましたので、文章はいいと感じてます。おはなしも、主人公が高校生ということで、少女がひとつ成長して終わる形になりますので、べつに変な話にはなっていない。主人公はテレビで震災を見ていてそのことにもやもやしていた人たちの陰画に見えますし、ネット上でこの作品をめぐってああだこうだ言っていることが、すべてこの小説内で主人公に対してなされることのパロディに見えてきたりしている。よくもわるくも話題作になってしまっていますね。
芥川賞取ればいいのにとすら思います。そうなれば、この小説をめぐるがやがやがもっと整理されてなされるのではないか。

追記 2018-07-07

新潮社:「群像」8月号、『美しい顔』に関する告知文掲載に関して http://www.shinchosha.co.jp/news/article/1317/
これを読む限り、新潮社との間では文芸作品を多く出版している出版社同士でどう対処するか話し合いも進んでいたようで、だから講談社がキレたのはネット民に対してなのでは。
ネット上で広がるうわさにどう抗うか、みたいなことになっている、そう見える。