文芸春秋は14日、週刊文春で連載されている作家、林真理子さん(66)のエッセー「夜ふけのなわとび」が「同一雑誌におけるエッセーの最多掲載回数」としてギネス世界記録に認定されたと発表した。認定記録は今年7月2日時点の1655回という。
林さんは「ネタがなくて辛いときもありましたが、37年間続けることができてうれしいです」「健康に気をつけて、あと20年くらい連載を続けていきたいと思います」とのコメントを発表した。
連載は1983年「今宵ひとりよがり」としてスタート。タイトルを変えつつ、これまで34冊が文庫化され、文庫累計426万部という。
林真理子の文春連載エッセイは、ほんとにうまいですよね。エッセイは小説よりも人によって好き嫌いが分かれるものかもしれませんが、林真理子のは個人的な好き嫌いを言う前にうまいのは認めざるを得ないところがある。ギネス入り、おめでとうございます。
林真理子といえば、50代以上の特に女性にとっては、80年代女子文化を切り開いたパイオニアの一人として記憶されているのではないでしょうか。アメリカの音楽シーンでいえば、マドンナが担った役割を、林真理子は日本の文筆シーンで果たしたと、少なくとも私は思っています。その後出てきた女性の物書きは、林真理子が切り開いた道を進んで来たといっていい。
それで、ふと思い出すのは、林真理子がルンルンだった頃、つまり出版デビューして間もない頃ですが、『噂の真相』の読者投稿ページにですね、最近もてはやされている林真理子の本を読んだけど全然いいと思わなかったわ、という若い女子からのおたよりが掲載されていて、これがなんかもう、全然本として読んでいない、著者である林真理子を自分の気に食わない同級生みたいに捉えていて、それで「ああいう子私はきらい!」みたいなことを書いていてですね、そしてそれを、「女子の本音を書いていると評価されているようだが、このようなことを言っている女子もいるぞ(これこそ本音ではないか?)」というような調子で得意げに載せている『噂の真相』に、あー男がやりがちな女叩きのやり口、女の言う事はこういう風にしか聞いてませんので悪しからず(テヘペロ)な、反権威とかいってるけどこーいうのが巣くってるのねここは、みたいな感想を持ったこと。
林真理子は出方が華々しかったし、デビュー以降ずーっと前進上昇し続けてきたせいか、マスメディア上で叩かれることも初期には多くて、しかし男性ライターに妙な言いがかりをつけられたら自分で反論できる人でもあった。そして、自分を客観視して自分のことを書くこともしてきた人だった。林真理子にくらべると、男性作家は甘やかされるというか、無駄に叩かれたりしないで済むんだなあ、と見ていて思った。女性が物書きになるというのは男性がなるのとは大分ちがうらしいと分かった。
それで、いま小説読みの間で話題になっている、桐野夏生『日没』(岩波書店)なんだけれど、主人公の女性作家を苦しめるのは、上で大昔に『噂の真相』に載った林真理子嫌い投稿、あれがもっと生(なま)に出てきて、SNSなどで瀰漫していたのが現実を侵食してきて、ついに役人という手足の生えたものになってしまったものたちだな、というのがあって。ディストピアものだが、近未来というより現在と地続き過ぎる感じがあって怖いのです、『日没』。
林真理子がギネス認定! というのと同時期に、桐野夏生『日没』という警世小説が話題になってるのは、80年代から隆盛した日本大衆女子文化のひとつの時代の終焉を示しているのかもしれませんね(なんか書いてておおげさな話になったなと自分でも思うけれども、まあ日記なんで今日はこんな風に思いましたという事です)