『世界』2023年12月号 中村隆之「ブラック・ミュージックの魂を求めて 第5回 変わりゆく同じもの」

 

今回は20世紀以降のアメリカ合衆国のブラック・ミュージック、つまりジャズ、ゴスペル、R&B、ソウル、ファンク、ヒップホップについて。

 ブラック・ミュージック、といったとき日本人がまず頭に浮かべる音楽ですよね。本文中に綺羅星のごとくミュージシャンの名前がちりばめられていて、ゴージャス! ブラック・ミュージックファン必読ですよ。

 ブラック・ミュージックの隆盛を、アフリカに伝わる「未来は過去から生み出される」という箴言と、「変わりゆく同じもの」という性質を肝に概観しています。

「未来は過去から生み出される」「変わりゆく同じもの」というのは、ブラック・ミュージックに限らず、日本の歌謡曲や食文化にまで通じるものだと思われますが、ここではアメリカ合衆国の黒人文化を中心に論じています。白人中心の社会で周縁化されてきた黒人文化をちゃんと評価しよう、ということですね。これは公民権運動にもつながっていく動き、ブラックミュージックもそれに連動して進化、深化。

 ヨーロッパから見て新興国だったアメリカ合衆国が世界を文化面でリードするに至った象徴がジャズですし、もはや世界的ポップミュージック全般においてブラックミュージックの因子が優勢になっています。

 しかし、大昔の映画で、ビング・クロスビーサッチモが一員にいるバックバンドを連れて歌っている歌手で出てきて、ヒロインと恋をするといった内容の娯楽映画の中で、ヒロインは上流のお嬢さんなんですが、舞台でビング・クロスビーが歌いながら上流白人の客に向かってジャズの良さを分かってもらおうとして、「ジャズは俗な音楽です」と言う場面があってね。劇中では自然でしたけど、今思うと、長らく白人主流層からはそういう位置づけで見られてきたジャンルだったということになりますね、ブラック・ミュージック。

 西洋のクラシックとは別水脈の偉大な文化、というのは、そういう位置づけもまた西洋エリートがするものになるのかもしれませんが(これは日本の邦楽も同じ立場になるでしょう)、それはそれとして、音楽は大衆に広がり世界中に根付いていきました。

 くわしくは『世界』12月号で読んでみてください。

 

 記事の中で取り上げられたファンカデリックの「ワン・ネーション・アンダー・ア・グルーヴ」をユーチューブから紹介しておきます。上の記事の中には名前が出てなかったですが、この曲の本編歌い出し部分はビリー・ホリデイぽくてぐっとくる。


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