文藝春秋2005年3月号

文藝春秋三月号の「NHK vs 朝日 メディアの自殺」を読むと、文藝春秋の技を感じる。伊達に「文藝」に二文字はついていないということだろうか。
この特集では、NHKの体質、特に海老沢体制下で悪化した部分への批判が主となっている。朝日新聞の取材についても触れているものの、脇筋扱い。しかし、冒頭、長井の記者会見にての本田記者を「質問というより、長井に代わって『補足説明』をしているようにも聞こえる。当初、記者ではなく関係者の一人なのかと勘違いしたほどだ。」と描写していることからはじまり、本田記者の仕事の傾向についても触れ、長井デスクはNHKの体質を批判するべきだったのに、不確かな伝聞を元に政治家の実名をあげたことで矛先を間違え、結果として今回の本田記者の記事が「誤報」になってしまった、としている。
私の印象としては、「NHKに圧力をかける政治家」を攻撃したかったのだろうけれど、朝日の記事では匿名扱いをされていたNHKの松尾氏が、記事を書いた記者に確認した上で「(この記事の)幹部というのは私です」と名乗り出て、取材されたが言ってもいないことを書かれたと反論してくるとは、朝日側は予想できていなかったのではないかな、というもの。
松尾氏が取材された当人として記事内容を否定してしまい、「朝日が正しいというのなら、その根拠となるものを出せ」と言われると、「取材源の秘匿」という理由が使えなくなってしまう。
朝日側が当初立てていた「俗受けしそうなわかりやすいシナリオ」が、NHK側が予想外の反応をしたために成り立たなくなってしまって困っているという、それだけなのではないかと。