年次改革要望書

日本の政策に大きな影響を及ぼしているという、アメリカからの年次改革要望書
郵政民営化」と「共済」についての部分を和訳してくれているブログがありました。

「官から民へ」という言い方は、昔は市民運動をしている人がよく使っていたように思います。その場合、「民」とは「市民」とか「市民団体」のことを意味していました。市民社会による自治的な運動を活性化させよう、という思いがこめられていたことばだったように記憶します。
しかしいつのころからか、「官から民へ」と言った時、そこでの「民」は私企業を指すようになりました。とくに小泉ブーム以降は「民」=「私企業」というのが国民的に定着した感があります。
この年次改革要望書のことがマスコミで大きく取り上げられないのは何故だ?という疑問を持つ人が多いようです。でも、私はこれ最初に知ったのはテレビ観ててだったような気がするんだよね。ま、その記憶自体がうろんで何の番組だったのかも思い出せないのですが。
かといってこれからこの件の報道をテレビに期待できるのかというと無理な気がするのね。最近のテレビ、サラ金のCMに入れ代わるようにしてアメリカの保険会社のCMが増えていますからね。
日本に対してやたら規制とっぱらえ、市場じゃ自由じゃ競争じゃそれが公正への道なんじゃと言ってくるアメリカですが、もちろんアメリカだって公共事業のようなこともしているのです。軍事産業がそうですよね。

1980年代初頭の時期、米国の軍産複合体は金儲けの種がなくなり、困っていた。攻撃型の核兵器は飽和状態になっていたからだ。そこで発想を変えて、ミサイル防衛の構想(当時はSDIと呼ばれた)に転換したところ、巨額の国防予算がつき、軍産複合体が生き残ることができた。税金を吸い上げていくためには、いくらかかるか不明確で、効果の測定も不確かで、国民の不安感を煽れるような兵器システムがいちばん都合がよい。その点でMDというのは優等生である。
研究開発以外の宇宙衛星の調達にあたっては、国産品を保護・優遇しないという1990年の日米合意で、日本の衛星メーカーが大打撃をこうむった経験があるが、米国は今後も日本にたいしては、自前の宇宙産業の育成を許さないだろう。それゆえ宇宙の軍事化を推進しても、経済的利益は米国の軍産複合体に吸い上げられていく恐れが強い。
(引用元:藤岡惇「MDと宇宙軍拡」『世界』2007年4月号)

第2次アーミテージ報告「米日同盟 2020年に向けアジアを正しく方向付ける」(2007年2月16日)の「付属文書:安全保障および軍事面での協力」には軍事面での勧告が出ている。そこから一部引用。

日本は最近、いわゆる「武器輸出三原則」を修正し、米日ミサイル防衛計画への参加拡大の道を開いた。次の一歩として、日本は、のこる禁止事項を解除すべきである。日本政府はまた、自国の民生産業基盤による国土安全保障と国防技術の開発へのより大きな関与を積極的に奨励すべきであり、日本の多額の科学技術予算から、国防関連技術の研究計画に資金を振り向けることを認めるべきである。特に、最近の事態に照らして、日本は、弾道ミサイル防衛への特別の予算を組むことを検討すべきである。

http://www.kyodo-center.jp/ugoki/kiji/070216armitage.htm#08

「のこる禁止事項を解除すべき」って、これも規制緩和要求のひとつでしょうね。
そして、このアメリカからの勧告を歓迎している日本の企業もあるようなのです。

決して看過できないのは、これらのほとんどが三菱重工をはじめとする日本の軍需産業の要求と重なっているという事実だ。私たちは今、運命共同体の道を選択した日米合体型「軍産学複合体」の登場という歴史的瞬間に立ち会わされているのかもしれない。
国防族と日米軍需産業幹部が集結した「第八回日米安保戦略会議」(06年8月、キャピトル東急)の場で、「はらわたを見せ合う」という「NATOでもやっていない」緊密な関係を結ぼうと呼びかけた大古和雄(防衛庁防衛政策局長:当時)のグロテスクな言葉を想起しよう。
(引用元:杉原浩司「「解釈改憲」の最後の大波が押し寄せる」『インパクション』157)

20世紀の歴史をふりかえると日米同盟は二大キ○ガイタッグになる悪寒もしてくるのですがね。すごい取り合わせなんじゃないでしょうか。
規制緩和」には要注意。そして防衛利権にもっと注目したほうがいいようです。