富江 BEGINNING

監督・脚本:及川中; 主演:松本莉緒; 原作:伊藤潤二
謎の美少女、富江をめぐる怪奇譚。
DVDで鑑賞。
冒頭、廃校になった高校に赤いコートにハイヒール、頭にはスカーフといういでたちで若い女性がやってくる。その姿のそこはかとなく昔風なきれいさが原作の伊藤潤二が描く美少女を思い出させる。
映画全体に、伊藤潤二の絵の雰囲気がよくとらえられていて、あのマンガの魅力をうまく映像化しているなとうれしくなる。富江を演じた松本莉緒は目がとても大きくて印象的。彼女のアップを観るだけでも価値がある。松本が作品全体を支えていると思った。
おはなしとなると、人道を外れるという点で軽く『悪魔のいけにえ』を抜き去っているような気もする展開だが、ウルトラQ的な怪奇さがいい味をだして殺伐感だけではない映画の楽しさを保っている。
富江を見ていると、マツバボタンを思い出す。母は子どものころツメキリソウとかチメキリソウとか呼んでいたそうだが、つめ切る、というか、ちぎってそれを植えるとすぐ根がついて花をつけるからそう呼んでいたとのこと。小さくて地面を這うように広がって花をつけるが、近づいてみるとかわいらしいというより、なにか肉厚で色が毒々しい印象があり、生命力が強そうなのですね。
伊藤潤二のマンガはいろいろ映画化されているようで、インターネットで調べてみるとなんと『首吊り気球』も映画になっているらしい。あれはマンガじゃないと無理なのではないかと思っていたが、どんな風に仕上がってるんだろう。
映画も楽しいんだけど、伊藤潤二のマンガ自体がもっと評価されてもいいんじゃないだろうか。あの絵の世界は、映画には真似できないものが充満してるから。