ゾンビランド

DVDで鑑賞。
ゾンビランドと化したアメリカ合衆国で、生き残った四人の男女がゾンビのいない土地を目指す。
謎の新型ウィルスにより感染者が続々ゾンビ化、アメリカはゾンビランドとなってしまう。内気な大学生(アイゼンバーグ)は引きこもり生活が幸いして無事、ゾンビのいない場所に行こうとしていた。道中で出会った中年男(ハレルソン)は、粗野だがゾンビを殺すのがうまい。二人はいっしょに車で移動することにする。途中、やはり感染を免れた二人の姉妹と出会い、四人となった生存者は12歳の妹が行きたがっている遊園地パシフィックランドを目指すことになった。パシフィックランドにはゾンビがいない、と妹は言うのだが。……
開巻から大学生を演じるアイゼンバーグによって舞台設定が説明される。ゾンビだらけになったアメリカの要点が映像とともにマンガ的に示され、いいかんじの出だし。おかしいのだがどこまでも落ち着いたアイゼンバーグの語りがいい。その後に続くゾンビ映画定番のゾンビに追われる人々の姿がスローモーションで映されるのも、グロテスクだがユーモラスで、音楽と合い間って乙なグルーヴが漂う。
ゾンビ映画というよりは、ゾンビものをネタにした青春ロードムービー。ゾンビだらけの道中は殺伐としたギャグの舞台となるが、四人が立ち寄った無人の店内で商品を破壊して一時憂さ晴らしをするあたり、いにしえのアメリカン・ニューシネマのエコーがかすかにした。途中でビル・マーレーが当人役で出てくるのだが、あのあたりの会話はたぶんアメリカ人にはすごく笑えるのだろう。アメリカ国内向けの作品なのかなと思った。
冒頭から血塗れ面のゾンビが口から血を垂れ流して人肉食ってるし、グロいのきたないのは嫌いという人には向かない映画だと思われるが、わりとこの映画のグロ描写は抑制されている。肉体損壊を見せ場とする真性ゾンビ映画とは異なっており、たとえば首ちょんぱをダイレクトに見せない演出はうまいといえばうまいのだが、ゾンビ映画的祝祭を期待して見ると肩透かしをくらったような気分になるかも。
アメリカン・ニューシネマには、社会に疎外感を覚える若者が四人くらいで車で旅する映画がよくあった。世の中への反発と、そう感じるがおかしいわけではない、だって気の合う仲間もいるし、でも、同時に社会は自分のことを相手にしてくれないんだというつらさも抱え、若さを描いても全体に暗く、その暗さが真実味を感じさせたのだろう。
この「ゾンビランド」は、社会のほうが逝っちゃった後だから、孤立した四人に暗さはない。そのへんはニューシネマにはないすがすがしさがあっていいのだが、生き延びることが難儀になり過ぎて暗くなってる暇がないだけにも見えるし、自分の仲良しさん以外は全部ゾンビにしか見えませんというような人はもうそのへんにあたりまえにいるのかもしれず、あたりまえだからアイゼンバーグはどこまでも淡々と語り続けるのかもしれないな。
ジェシー・アイゼンバーグがいい。ウディ・ハレルソンは余裕でチャーミング。笑劇的アクションも楽しめました。